クジラがレジ袋を好物のイカと間違えて食べている恐れ、大量誤飲の原因か、最新研究
素材の音響特性を調査、イカと驚くほどよく似たレジ袋の「エコー」
深海に潜って餌をとるクジラには、暗闇の中で餌を見つけるため、音の反響を利用して獲物の位置を特定するソナーのようなしくみが備わっている。しかし彼らのソナーは、海に浮かぶプラスチックごみを好物のイカとして探知している可能性がある。 【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚 10月16日付けで学術誌「Marine Pollution Bulletin」に発表された新しい研究によると、ポリ袋(レジ袋)のようなプラスチックごみは、その形状、大きさ、風化の度合い、成分が相まって、イカと驚くほどよく似た「エコー」を返すという。 推定値には幅があるが、世界の海洋には毎年、重さにして数百万トン、数にして合計数十兆個のプラスチック片が流入していると考えられている。 プラスチックが海に拡散するにつれ、海洋哺乳類の体内からプラスチックが発見されたという報告は数百件にのぼっている。プラスチックは彼らの胃の組織を傷つけ、感染症や窒息や栄養失調を引き起こし、飢餓状態に陥るクジラもいる。世界各地の海岸に打ち上げられるクジラの死体の胃には数十キログラムものプラスチックごみが詰まっていて、問題の深刻さを証明している。 「ある種の動物にとっては、海に漂うプラスチックを食べないようにすることはほとんど不可能だと思います」と、ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー(探求者)で米スタンフォード大学の海洋生物学者であるマシュー・サボカ氏は言う。氏は今回の研究には関与していない。 「それは彼らが愚かだからではありません。さまざまな感覚経路にとって、プラスチックは非常にまぎらわしい物質だからです」 いくつかの研究によると、ウミガメなどの動物には、水中に漂うポリ袋やプラスチックフィルムが、餌となるクラゲやイカのように見えている可能性があるという。別の研究からも、サメなどの魚がプラスチックを餌と見間違える可能性があることが示されている。 けれどもこの理屈は、アカボウクジラや、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種(Vulnerable)に分類されているマッコウクジラのように、真っ暗で何も見えない深海でエコーロケーション(反響定位)によって狩りをする動物には当てはまらない。 そこで科学者たちは、こうしたクジラたちが大量のプラスチックを食べてしまう理由を解明しようと試みた。