お金を燃やす世界から、''ごみ''という言葉のない世界へ。マシンガンズ・滝沢秀一
滝沢 ダンボールの分別だけでなく、日本の最終処分場の残余年数が約20年しかないという事実は、もう1,000回以上言っています(笑)。でも毎回「これ、知ってました?!」というノリで伝えます。ごみについて話すのは、芸の一つだと思っていますね。 ただ、どんなことを伝えるにしろ、基本的には自分がびっくりした正直な気持ちを忘れないことが大事だと思います。僕も最初は、ごみをどうやって分別すればいいのか、どうやって処理されているのか、何も知りませんでしたから。初心を忘れないのは大事だと思います。
分別が当たり前ではない価値観と、どう向き合う?
滝沢 過去、大崎町で何度も分別をする意味を住民の方々に説明をしてきて、何度もリサイクル率日本一になったけど、新たに海外の方も入ってくるわけですよね。 ── 大崎町では技能実習生なども含め、人口の約4パーセントが海外の方だそうです。 滝沢 そしたら、30年前と同じように、また説明会をしたり分別のことを理解してもらったりしなければいけないですよね。しかも、日本語以外で。 滝沢 僕が東京でごみ回収をしていても、海外の人たちの文化の違いを感じます。例えばシェアハウスのような住まいのごみを見ると、分別されていなくて全部ごちゃごちゃ。おそらく分別するという習慣がないし、誰からも教えてもらっていないだろうから、当然ですよね。 ── 海外からの移住者も増えている今、分別に対する意識や文化の違いは、ますます多くの地域で問題になりそうです。 滝沢 僕、一つアイディアがあるんですけど。日本に来る飛行機の中で、非常事態時の脱出方法の説明と合わせて「日本ではごみを分別しましょう」ってアナウンスしたらどうかなって。 ── 面白いアイデアですね!
滝沢 ごみって、生活する上で絶対トラブルの元になりますよね。それにほとんどの人が飛行機で日本に来るだろうから、事前に分別のことについて知ってもらえるいい機会だと思います。 ── 海外の人だけでなく高齢化で分別がむずかしい方も増えているのが、大崎町では課題になっているようです。 滝沢 それは、僕も感じます。都内の団地でごみ収集をしていると、きちんとペットボトルのラベルを剥がしてくれていた人たちが、ある日突然、剥がしてくれなくなることがあります。最初は「どうしてだろう」と疑問でしたが、団地に住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんが、力が入らなかったり認知症になったりして、だんだん分別できなくなってくるんですよね。 だから、一軒ずつ家を回ってごみを回収する、ふれあい回収のような仕組みが必要だなと思います。地域によっては予算がなくて、個別回収できないところもあります。でも都会はもちろん限界集落にも独り身の高齢者が住んでいることも多い。粗大ごみを出すのを手伝ったり、分別の仕方を教えたり、ただ話し相手になったりするだけでも重要。地域の見守り機能にもなるし、そういうところに予算を回すべきだと思います。 ── ごみ処理の仕組みと自治体の規模や予算の使い方は、本来は密接に関わっていますが、住んでいる人たちはなかなかイメージしづらい気もします。 滝沢 いろんな地域に行く中で感じるのは、多くの自治体が気にしているのはごみの排出量と予算だということです。ごみ回収に関わって働いてる人がどうやって生きているかとか、どう感じているかということまで、想像されていないんだなと思います。 東京では、ごみの排出量が減ると人件費が減らされる。「ごみの量がこれくらいなら、今の人数を雇わなくていいだろう」と思われる。これが一番の問題なんです。