活発化する火山活動 噴火予知はなぜ難しいのか?
噴火の恐れがある他の火山は?
日本にはいつ噴火しても不思議ではない活火山がいくつもあります。次の噴火はどの火山かを言うことは難しいのですが、蔵王山(ざおうざん)、吾妻山(あずまやま)、日光白根山(にっこうしらねさん)などは火山性地震も増えているので、噴火がそう遠くない可能性があります。 それ以外に、富士山や箱根山(はこねやま)も、いつ噴火してもおかしくない活火山です。しかもこれらの火山が噴火したら、観光客など、周囲に多くの人が集まっているだけではなくて、首都圏にまで大きな影響を及ぼすでしょう。 例えば富士山の一番近年の噴火は1707年の宝永噴火でしたが、そのときには、噴火後2時間で江戸に火山灰が降って、江戸中が暗くなったことが分かっています。次の噴火では、文明が進歩しただけ、いままでにない災害になる可能性が大きいのです。 そして、まずいことに富士山の場合はこの噴火の前に何が起きて噴火に至ったかが、なにせ300年以上前のことですから、何もわかっていないことなのです。 箱根山は最後の噴火以後1200年も経っています。しかも、もっと前の箱根の噴火では横浜まで火砕流が到達したことが分かっています。今後起きたら、大災害になるでしょう。 もちろん、富士山や箱根はいつ噴火してもおかしくない活火山なので、各種の機械観測が行われています。しかし、機械観測で前兆を捉えたことはないので、観測データがどこまでいったら危ないのか、が分かっていないのです。 もちろん観測器が今よりも多くて、現在はごく手薄な火山学者が多ければ、前兆をもっと捉えられるようになるはずですし、噴火に至る過程もずっと分かるようになるでしょう。しかし現状では、気象庁や大学の火山観測の予算はごく限られていますし、論文を書いて活発な研究活動をしている火山学者は、全国でも20人前後しかいないのです。
-------------------------------- ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年東京生。東京教育大付属高卒。東大理学部卒。東大大学院終了。理学博士。東大助手、北海道大学教授、北海道大学地震火山研究観測センター長、国立極地研究所長などを歴任。専門は地球物理学。2013年5月から『夕刊フジ』に『警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識』を毎週連載中。著書の『火山入門――日本誕生から破局噴火まで』2015年5月初版。NHK新書。『油断大敵! 生死を分ける地震の基礎知識60』2013年7月初版。花伝社。『人はなぜ御用学者になるのか――地震と原発』2013年7月初版。花伝社、など多数