活発化する火山活動 噴火予知はなぜ難しいのか?
「見逃し」はないとされてきた噴火予知
草津白根山で噴火した本白根山は3000年前から1万年前までは、さかんに噴火していたことが、火山地質学の調査から分かっています。ただ最近に至る約300年間は、噴火はもっぱら草津白根山の北部、つまり白根山の山頂付近で起きてきました。 人間にとっては3000年というのはとてつもなく前の歴史ですが、火山や地球にとっては、ごく短いものなのです。現に活火山かそうでない火山かを見分けるのは「1万年」が境になっています。 草津白根山の場合には、この近年の噴火だけを反映して、ハザードマップが作られていました。そして、このハザードマップを下敷きにして、地域の防災計画が作られるので、草津白根山の場合には、南部での爆発的な噴火は忘れられていたのです。 1月の草津白根山の噴火は小さな水蒸気噴火だったということで、前兆はほとんどなかったのではないかと思われています。大規模にマグマが上がってきて、大規模な山体膨張が起き、それが地殻変動の測器に捉えられれば、前兆としてわかる可能性があります。 「見逃し」があって不意打ちになる地震予知と違い、かつて噴火予知は「見逃し」はないが「空振り」はあると言われました。地震予知は2017年の秋に政府が“白旗”を揚げたように「現在の科学では不可能」ということが明らかになっています。 それに比べて、なんの前兆もなくていきなり噴火することはなく、何かの前兆があって噴火しない例はあっても、前兆も観測されずに噴火することはないと言われていたのです。 しかし残念ながら、御嶽山噴火に続いて、この草津白根山の噴火も、噴火警戒レベル1という噴火から遠いと思われたときに噴火して、大きな被害を生んでしまいました。
火山ごとの噴火データがほとんどない
火山は、その火山ごとに性質が大きく違います。いくつかの火山は、機械観測が始まってから何回も噴火があったので、噴火に至る過程も比較的よく分かっています。例えば、浅間山(群馬・長野県境)や桜島(鹿児島県)です。 火山の観測には、火山体の中で起きる火山性地震の観測や、火山性微動の観測、地殻変動、火山から出てくるガスや水の火山化学の観測などがあります。日本の活火山は110あまりありますが、その半分以上では、この種の観測が行われています。 しかし、浅間山や桜島以外のほとんどの火山はこれらの観測を展開してから噴火が繰り返されていません。つまり噴火予知のデータとしては不十分なのです。 火山ごとに性質が違いますから、機械観測を展開してから、その火山で少なくとも1、2回の噴火がないと噴火予知の知識は蓄積されないでしょう。