30年変わらない通関料金・・・適正な料金水準にほど遠く、業者もため息
通関料金の据え置きが問題になっている。原価の大半を占める人件費が急上昇する一方、名古屋通関業会の調査によると、料金自由化前の1995年の水準が定着しているとみられる。通関業者から荷主への値上げ要請が難しいのに加え、協議自体に応じない悪質な荷主も少なくない。政府はコスト上昇分の価格転嫁と賃上げを促すために昨年11月、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を出したが、浸透しているとは言い難い状況にある。
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輸出は申告1件当たり5900円、輸入は同1万1800円。通関業法に基づき、95年に定められた通関料の上限額だ。これは2017年に撤廃され、料金が自由化された。ところが、29年たったいまも実勢料金は変わらず、適正水準には程遠いという。 名古屋通関業会が7月から8月にかけ会員店社166者を対象に実施したアンケートでは、回答店社74者のうち92%が「旧上限額より高い料金を適用している荷主はほとんどいない」と回答した。95年当時と比べて通関料は「変わらない」「どちらかというと下がっている」とした事業者が計92%に上り、「多くまたは一部の荷主に対して値上げが必要」とした事業者は計96%に達した。 通関業者の利益は大きく減っているという。料金が上がらない一方で、人件費は上昇を続けている。例えば、24年の最低賃金は全国平均で95年の1・6倍以上となった。アンケートでも値上げが必要な理由として人件費の上昇を挙げた事業者は97%となっている。 業務に多くの労力がかかるようになり、作業生産性も落ちている。申告1件当たりのアイテム数の増加、EPA(経済連携協定)や他法令確認の複雑化などが要因だ(グラフ)。業務のシステム化により効率化が進んだ部分もあるが、システム費用もかさんでいる。 働き方改革の推進もコスト増加の大きな要因になっている。事業者は時間外労働の抑制、育児休業や短時間勤務制度の充実などを進めてきた。 コンテナのバンニング・デバンニングが港湾の自社倉庫から荷主施設に切り替わるなど物流の変化により、ほかの収益源での穴埋めも難しくなってきたという。通関は「いまの料金ではとても業として商売に乗ってこない」との声も聞かれた。