「シン~」や「2.0」似たようなタイトルの本はあり・なし? 新書の編集長たちの見解は
ベストセラーのタイトルを見ると、「~の壁」「シン~」「2.0」というように同じようなタイトルを目にする。出版社はどのようにとらえているのか。タイトルへの思いや付け方などを、新書の編集長に聞いた。AERA 2024年11月11日号より。 【図表を見る】「AERAが選ぶ ベストセラーのタイトル」はこちら * * * 「いま、角川新書は“実証エンタメ”をレーベル方針として掲げています」 そう高らかに宣言するのは「角川新書」編集長の岸山征寛さんである。 角川新書は2015年に角川oneテーマ21、角川SSC新書などを統一した新書レーベルである。岸山さんが言う“実証エンタメ”は社会問題や歴史、政治経済などについて、第一線の著者による、事実を元に検証したり、批評したりする作品でありながら、エンターテインメント性も忘れずに新書というパッケージにして読者に提供する。 「エンタメと聞くと軽い感じがするかもしれませんが、読者の知的好奇心を刺激できるように切り口を工夫するということです」と岸山さんは話す。毎回とても難しいが、それが使命であると続けた。その考えがわかるのが『後期日中戦争』(広中一成)というタイトルの書である。 「日中戦争は1937年から45年の敗戦まで続いていました。しかし、よく知られている南京事件は37年、重慶爆撃も38年からで、41年の真珠湾攻撃の前のことです。実は、太平洋戦争以降の日中戦争について説明できる人は少ないのです。広中さんは41年を境に前期と後期と捉えられていて、『これは新しい切り口だ』と思いましたので、41年以降の日中戦争を描いた本作は『後期日中戦争』としました」 ■新しい言葉をつくる 岸山さんはこの他にも『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』(安田峰俊)という単行本も担当した。法務省はじめ公的機関は専門職の移住労働者に「高度外国人材」という言葉を使っている。それは非熟練労働者を「低度」と想定しているということだ。だが、日本は技能実習生等、「高度」ではない外国人にこそ依存し、必要としている。しかし、紋切り型の報道では彼らの正負両面の生身の姿は描かれてこなかった。彼らの「現実」に迫ったルポだ。 「私は、タイトルでは手垢のついた言葉や流行り言葉はほとんど使わないです。『後期日中戦争』も『「低度」外国人材』もそれまではなかった言葉です。新たな言葉を著者と一緒に生み出した方が読者に新しさを感じてもらえるからです」