首里城焼失から5年 復元工事進む正殿によみがえる赤瓦
那覇市の首里城が火災で焼け落ちてから、31日で5年となった。「正殿」の復元工事は60~65%が完成。屋根には約6万枚の赤瓦がふかれ、かつての姿がよみがえりつつある。今後、壁の塗装、正殿の守り神といわれる「龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)」、「大龍柱(だいりゅうちゅう)」などの設置を経て、2026年秋には完成する予定だ。 【写真】炎を上げて燃える首里城=2019年10月31日午前4時24分、那覇市、岡田将平撮影 赤瓦は、沖縄県内の3カ所の工場で焼かれた。首里城の瓦を焼く温度は一般の瓦より30度高い1030度。色がより赤くなり、強度も増すという。沖縄県赤瓦事業協同組合の八幡昇代表理事(75)は首里城正殿屋根に瓦がふかれた様子を見て「感無量しかない。ようやく首里城の復元が近づいてきたという気持ち。先祖から引き継いできた技術を使って、復元に関われたことを誇りに思う」と話した。 琉球王国(1429~1879年)の王宮として、政治、外交、文化の中心となった首里城は、何度も焼失と再建を繰り返してきた。18世紀に再建された首里城は、1945年の沖縄戦で破壊されたが、92年、国営公園として正殿などを復元(平成の復元)。2000年には沖縄県内のほかの城(グスク)跡とともにユネスコの世界文化遺産に登録された。 5年前の火災では、正殿を含む9棟の建物が被災。火災で焼け落ちる様子を見て、多くの人が涙を流した。 復元への動きは早かった。火災翌年の20年2月から、焼けた建物の撤去が始まった。正殿復元工事の着工は22年11月。建物を雨風から守るため「素屋根(すやね)」と呼ばれる仮設の建物内で進められた。「見せる復興」をテーマに掲げ、ガラス張りの見学コースを設け、宮大工や職人の仕事ぶりや、組み上がってゆく正殿の様子を間近で見られるように工夫した。
朝日新聞社