なぜ大坂なおみは”因縁”のセリーナに圧勝できたのか?
もちろんウィリアムズへはこれからも憧憬の思いを抱き続ける。それでも圧倒的なパワーで女子テニス界を席巻してきた元女王をリターンショットだけでなく、サービスエースで6本に対して3本、ウィナーで20本に対して12本と真っ向からねじ伏せた勝利は、憧れの存在からライバルをへて、ごく近い将来には後継者になるという誓いを心のなかで立てた証となるのだろう。 何よりもダブルフォールトを8度も犯しながら崩れる隙を最後まで見せなかった精神的な強さは、新たな時代を背負う女王にふさわしい貫禄すら漂わせていた。大坂がふと漏らした「今日の試合を見ている子どもたちが、そうなるかはわからないけど」という言葉には、かつて自分がウィリアムズに憧れたように、未来ある子どもたちが自分に憧れてくれれば、という願いも込められていた。 20日の決勝では、世界ランク24位のジェニファー・ブレイディ(25、アメリカ)と対戦する。 四大大会で初めてファイナリストになったブレイディとの対戦成績は大坂が2勝1敗とリードし、四大大会では昨年の全米オープン準決勝でフルセットの末に勝利している。 「いつもは試合前夜に和食を食べてきたけど、実は昨晩はギリシャ料理を食べていて、そして起きてみたら……。だからギリシャ料理を続けるのか、和食に戻すのかを考えないと」 眠りについている間に決着がついた男子シングルスの準々決勝で、ステファノス・チチパス(22、ギリシャ)が2セットを先取される逆境から、四大大会で男子歴代最多タイとなる20勝をあげているラファエル・ナダル(34、スペイン)に逆転勝ちを収めていた。 チチパスにあやかり、験を担ぐ意味で再びギリシャ料理に舌鼓を打つかどうかを迷っていると明かした大坂は、もちろん大一番を乗り越えた先に待つブレイディとの決勝を楽観視しているわけではない。頂点に立つために最も大切な平常心が、思わず浮かべた無邪気な笑顔に反映されていた。