なぜ大坂なおみは”因縁”のセリーナに圧勝できたのか?
16日の準々決勝で大坂は”クセ者”の謝淑薇(35、台湾)を撃破。ウィリアムズは世界ランク2位の強敵シモナ・ハレプ(29、ルーマニア)をストレートで破り両者の勢いもコンディションも最高潮だった。 接戦が必至と予想された大一番で、いきなり2ゲームを連取し、ペースをつかみかけたのは、ウィリアムズだった。歴代最多タイとなる四大大会通算24勝目へ向けてモチベーションも高かった。 だが、大坂は、そこから逆襲した。ポイントになったのは、シーズンオフに入った昨年11月からウィム・フィセッテコーチのもとで徹底強化に取り組んできたリターンショットだった。 フォアでもバックでも、ミスを恐れることなくベースライン付近へ強いショットを放ってくる大坂に押され、時間の経過とともにウィリアムズのアンフォーストエラー(凡ミス)がかさんでいった。 第1セットは第3ゲームから5ゲーム連続で大坂が奪取。第8ゲームこそキープされたが、第9ゲームを危なげなく制して先取すると、続く第2セットもいきなり相手のサービスをブレーク。リターンミスで献上したポイントが1つだけという内容に、大坂も笑顔を浮かべながら胸を張った。 「最初はアンフォーストエラーが多いことが気になってしまい、ちょっと恐怖と緊張感を覚えてしまった。でも、そこから自分のペースを取り戻すことができた。ずっと取り組んできたリターンを何度も生かすことができたし、私自身、レベルアップしていると感じている」 子どものころからその圧倒的な強さに憧れ、いつかはプロの舞台で戦いたいと夢見てきたウィリアムズとのツアー対決を振り返れば、過去3度はどちらかが特異な状況に置かれていた。
初対決となった2018年3月のマイアミオープン1回戦は、長女の出産などによるブランクから復帰したばかりのウィリアムズがストレート負け。試合後の会見をボイコットする騒ぎが起こった。 2度目の対戦は同年9月の全米オープン決勝。再びストレート勝ちした大坂が初めて四大大会のタイトルを手にしたが、観客席のコーチからサインを送られるコーチング行為があったとして警告を受けたウィリアムズが主審へ猛抗議。ラケットを破壊してポイントを失い、主審への暴言でゲームペナルティーを受けるなど、大荒れの展開となった。 アメリカ人のウィリアムズを後押ししていた観客席から、一転してブーイングが収まらなくなった状況で、大坂が優勝スピーチで「ごめんなさい、勝っちゃって」と、涙を流す後味の悪さも残した。 ウィリアムズがストレート勝ちで雪辱した2019年8月のロジャーズ・カップ準々決勝は、サーシャ・バイン前コーチとの契約を解消した後の大坂が、心技体を含めたすべてでどん底に陥っていた。 ある意味、事実上の決勝戦といわれた今回の試合は、完全決着戦だった。 だからこそ、大坂は「正直、私にとって彼女と試合ができるのは光栄だし、ひどい試合にしないように全力を出し切りました」と万感の思いを込めて振り返った。 「子どものころから彼女をずっと見てきたし、彼女と対戦することをずっと夢見てきた。実際に(ツアーで)彼女と対戦してきたなかで学ぶこともたくさんあったたし、競技者同士という考え方も自分のなかでしっかりと確立できたと思っています」 大坂が言及した、競技者同士という考え方とは果たして何を意味しているのか。