欧州の自動車勢力図が激変する!? 10月に開催されたパリ・モーターショーに見るヨーロッパ自動車市場の現在
台風の目は、リープモーターか?
地元フランス勢の奮闘ぶりと、中国ブランドの躍進。2年ぶりに開催されたパリ・モーターショーに見る、欧州自動車市場の現在。 【写真6枚】欧州自動車市場の台風の目、リープモーターの新型車がこれ! 10月14日から1週間にわたり開催されたパリ・モーターショー。欧州勢で最も勢いがあったのはルノー・グループで、量産を前提にしたEVの数々を展示した。アルピーヌA390_βは、2025年にブランドの故郷ディエップで生産されるスポーツ・ファストバックのコンセプトカー。 ルノー4 E-Techエレクトリックは、戦後フランスを代表する4(キャトル)の意匠を内外に反映しており、4万ユーロ以下で来年発売予定だ。フランスでは、フォルクスワーゲンがID.3の基本車種の価格を年末から約2万8000ユーロとすることを明言しており、欧州のEV界では当面、2万ユーロ後半の戦いが繰り広げられそうだ。 ◆中国勢と組んだステランティス 対するのが、EVで欧州市場席捲を狙う中国ブランドである。BYDをはじめ計8ブランドが出展し、高級車ブランドとして知られる紅旗の発表会には、ロールス・ロイスから電撃移籍し、デザイン担当副社長に就任したジル・テイラーが新型EVを紹介した。EU委員会は中国製EVに最大45.3%の関税を課すことを10月末に決定。BYDがハンガリー工場の建設を決めたように、EU圏内に生産拠点を置くことで課税回避する中国メーカーが続くことは必至である。 そうした中国車関連の話題で最も耳目を集めていたのがリープモーターだ。2015年設立の新興ブランドだが、2023年にステランティスが同社の株式約21パーセントを取得。今年に入ってリープモーターの、中国を除いた海外での生産、販売業務を担う合弁会社を設立した。この協業にSNS上では、「かつて輸入車を徹底的に排除したフィアット創業家の総帥、ジャンニ・アニェッリは、墓の中で驚いて倒れただろう」といった辛辣な意見が出回った。いっぽう私の知人でフィアット販売歴27年の営業マンは、「ステランティスの経営不振が続く中、顧客確保に広い選択肢を持つのは良いこと」と肯定的にとらえる。 欧州各地では年内に200箇所のリープモーター販売拠点がオープンする。吉利/ボルボ系のリンク&CO、上海汽車系のMGの躍進を見ると、成功の余地はなきにしもあらずだ。欧州の自動車界は急速に変化している。2年後のパリ・モーターショーは、かなり異なる風景になっているかもしれない。 文・写真=大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA (ENGINE 2025年1月号)
ENGINE編集部