駒大高 都大路初出場に導いた監督は「元バレー部」の陸上素人
女子の東京代表として駒大高が全国高校駅伝に初出場する。以前は都予選で10位台だったチームを成長させたのは、10年前に就任した元バレーボール部で「陸上素人」の監督だ。 【写真】駒大高が都大路出場を決めた瞬間 練習終了後、選手たちが和気あいあいと話す輪の中心に草島文勝監督(36)はいた。冗談を言い合ったり、競技と全く関係ない学校生活の話をしたり、グラウンドに明るい笑い声が響いていた。 駒大高の卒業生でもある草島監督は学生時代、バレー部で、法大を経て国内2部リーグでもプレーした。現役引退後は別の高校で講師を務めながら、外部コーチとして母校のバレー部の指導をしていた。 しかし、2014年4月、母校の駒大高に採用されると、専門の指導者が不在だった陸上部の顧問を任されることになった。 「なぜ、僕が陸上部なのかとびっくりした」 当然、練習メニューを作る知識もなければ、競技の特性も異なる。初めは理解できないことばかりだった。 「任された以上、強くしたい」と意気込んだが、最初はうまくいかなかった。練習を簡単に休む選手や、あいさつをしっかりできない選手が少なくなかった。礼儀など基本的なことから守るように伝えると、「緩く、楽しく」を望む一部の選手は退部していった。練習量を増やした結果、故障する選手も続出した。 状況が変わったのが、17年だ。箱根駅伝常連校の駒沢大で選手とマネジャーを経験した渡辺聡コーチ(33)がチームに加わった。外部のコーチやトレーナーなど他のスタッフも増えたため、草島監督は役割分担を徹底しようと心に決めた。 「陸上の練習メニューや練習時の走りに対し、僕は何も口を出さない分、生徒の表情や(活動を記録する)陸上ノートの字を見るなど、細かい変化を見落とさない。積極的にコミュニケーションも取るようにした」 陸上の専門知識はなくとも、団体球技のバレーで培った「周りをよく見る観察力」には自信があった。学校外の関係者とのやり取りも引き受けた。 二人三脚で取り組んできた渡辺コーチは「草島先生はそれぞれの得意なことに集中させてくれ、意見を柔軟に受け入れてくれる。それがチームの一体感につながっている」と分業制の効果を語る。 着実に力をつけていった結果、18年に男子が全国高校駅伝初出場を果たし、女子も今年、初の都大路にたどりついた。 就任10年を迎えた草島監督は「陸上をやっていなくて良かったことの方が多い」と振り返る。負けず嫌いな性格で、バレー部のコーチ時代は自身と選手を比べ、「もっとできるだろ」と厳しく接していた。一方、陸上は経験がないからこそ適度な距離感で選手たちと接し、サポートに徹することができている。 積み重ねて得た信頼関係が明るく和やかな雰囲気を作り、草島監督の目指す「自由に夢や目標を語り、伸び伸びと成長していけるチーム」になってきた。 スポーツである以上、上の順位を目指す気持ちはバレーに没頭した学生時代から変わらない。紆余(うよ)曲折のあった10年間の思いを胸に初出場初入賞を目指す。【磯貝映奈】