弾劾訴追案可決の韓国・尹錫悦大統領がひそかに狙う「一世一代の大博打」…!苦境なのに強気を支える北朝鮮浸食への危機感
何のための国会兵力投入だったのか
尹錫悦大統領は今回の非常戒厳において、国会機能を麻痺させるつもりはなかったし、実際に麻痺するような事態を招かなかったことを、国民向けの談話で語っている。 過去に韓国で行われたような戒厳をするためには、数万人の兵力を国会に突入させることが必要だけれども、今回国会に投入したのは、300人未満にすぎず、しかも実武装もしていない。 また、尹錫悦大統領が非常戒厳を国民に伝えたのが12月3日の午後10時30分で、国会への兵力投入はそれから1時間以上遅れた11時30分から12時過ぎのことだ。もし国会を完全に封鎖するつもりがあるならば、非常戒厳を発令する前の段階で軍隊を広く招集して国会の近くに待機させ、発令と同時に国会を占拠する行動に出ただろう。 そうした行動に出なかったのは、尹錫悦大統領が非常戒厳を発令しながらも、国会の機能停止を狙っていなかったことを示していると言っていいのではないか。 今回の非常戒厳が極めて中途半端な結果に終わったのは、尹錫悦大統領の狙いが外れた結果として起こったものではなく、もともとその狙い通りに進んだものだと見ればよいだろう。 では、なぜ尹錫悦大統領はこんな中途半端に見える非常戒厳を宣言したのか。 尹錫悦大統領が国会に軍隊を送ったのは陽動作戦にすぎず、本丸は選挙管理委員会だったのではないかということは、かなり広く知られるようになってきた。 選挙管理委員会に入った戒厳軍は、期日前投票名簿管理サーバー、行政システムのサーバー、セキュリティシステムのサーバー、外部ネットワークと連結された通信設備サーバーの写真を撮り、わずか30分間で退散した。 わずか30分でどこまでのことがわかるのかは、やや疑問に感じるところもあるが、それだけで十分だと確信できる根拠が尹錫悦大統領の側にはあったのかもしれない。
次の注目は弾劾裁判での弁明
尹錫悦大統領は、大統領弾劾訴追を受けて、これから憲法裁判所で本当に大統領として罷免されるかどうかを争っていくことになる。尹錫悦大統領の狙いは、この大統領の弾劾裁判を受けることだったのだろう。 大統領の弾劾裁判を受ければ、自己を弁明する機会が与えられる。この弾劾裁判の様子は広く報道されることになるだろう。このことを通じて、韓国がいかに北朝鮮や中国の強い影響力工作を受けているのか、「共に民主党」がいかに腐敗しているのかについて、尹錫悦大統領は詳細に証拠をあげて語っていくつもりなのだろう。 裁判が進むたびに、その中でどんな話が出たのかが、さまざまに報道されることになる。通常は韓国メディアの後追い報道に依存している外国メディアも、今回の弾劾裁判については直接取材を行なって、世界に報じていくことになるだろう。 尹錫悦大統領は弾劾裁判を同時中継で放映してもらいたい意向だとの話もある。メディアの勝手な切り取りを許さないようにすることで、韓国民に真実の韓国の危機を伝えていきたいということなのだろう。 ところで、韓国の憲法裁判所の裁判官は定員が9名だが、現在は6名しかいない。定員9名のうち2/3以上の賛成、つまり6名以上の賛成がないと、弾劾は成立しない。したがって現在の6名の状態のままでは、裁判官全員が弾劾に賛同しないと、大統領の弾劾は成立しないのだが、この6名のうちの4名が保守派で、左派系の裁判官は2人しかいないと伝えられている。このことからすると、弾劾の成立は現実的にはなかなか難しいのかもしれない。 また憲法裁判所が審理を行うには7名以上の裁判官が必要で、現在は少なくとも一人足りない状態にある。新たな裁判官を選出するまでに時間もかかることになる。現在は弾劾裁判がすんなりと進められる状態ではないのだ。こうした点も、尹錫悦大統領が強気に出られる根拠になっている。 尹錫悦大統領の一世一代の大博打が結果としてどうなるか、今後も注目していきたい。
朝香 豊(経済評論家)
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