古き良き日本の港町、千葉・勝浦でのサーフスタイル
愛すべき勝浦エリアとは
勝浦市へはアクアラインを走り抜けて、都心から車で約1時間40分。所要時間としては一宮町へのアクセスとさほど変わりはないかもしれません。 波のサイズはざっくり一宮のワンサイズダウンと思っていただいていいでしょう。しかし混雑っぷりもまた一宮よりグッとサイズダウンしますので、僕のようにどちらかというと人の少ないポイントを好む者にとってはピタリとはまるエリアなのです。 そして意外に思われるかもしれませんが、クラシカルなリーフのポイントが点在するのも特徴の一つです。 日常的にビジターも多いメインとされる「部原」のポイントや、歴史と伝統を誇る「マリブ」と呼ばれているポイントなどは、インサイドがビーチで形成されているリーフブレイクです。そのほかにもローカルサーファーが昔から大切にしてきたポイントがいくつもありますが、ここではあえてその名前は伏せておきます。 リーフブレイクの安定感のある波は、全国各地どこのポイントにおいてもその土地のローカルサーファーによって守られて来ました。従って僕らのような立場のビジターは、いかなる場合においても謙虚さを忘れるわけにはいきません。 僕は勝浦の海を訪れるたびに、サーファーとしての心得と言いますか、基本姿勢というものを学ばせてもらっています。
湘南がシネコンなら、ここはさながらミニシアター
さて、僕がこのエリアに通うようになったきっかけは、東京の友人たち数名がシェアスタイルで借りているサーファーズハウスが勝浦のとあるビーチの目の前にあったからです。そのメンバーのほとんどが平日は都内で仕事をしているので、使われているのはたいがい週末。そこで僕は平日に時々お邪魔して滞在させてもらっているというわけです、はい。 青々と茂る芝生の庭の向こうには、無垢で美しい太平洋が広がっています。ハウスの眼前のポイントは低気圧が過ぎた後などに地形がうまいこと決まれば、チュービーなビーチブレイクが現れます。そして何よりそのポイントにはほとんど人がいることがありません。タイミングによっては貸切のようにサーフィンを楽しむこともできます。 そしてハウスから少し歩けば、比較的空いているリーフのポイントもあり、ローカルサーファーの方々への配慮さえ怠らなければ、僕のような立ち位置のサーファーも十分楽しむことができるのです。 このような環境に巡り会えたことは、僕の人生においてとても貴重でありますし、ある意味宝物のようなものです。まさに友人との良き出会いがもたらしてくれたギフトですね、ほんと。 勝浦は一宮や湘南のような華やかさこそないかもしれませんが、人工物の少ない自然豊かな海岸の風景と、昔ながらの漁師町が醸し出すシックな雰囲気が、時々訪れる僕に極上の癒しを与えてくれます。 人々もなんとなくシャイといいますか無骨な印象を受けますが、懐に入ってしまえばとても温かいように思います。どことなく物静かでなんとなく凛とした街全体の佇まいは、僕の感性にピッタっと寄り添ってくれる。従ってとても居心地がいいのです。 映画に例えるならばスピルバーグ作品って言うよりもジム・ジャームッシュのモノクロの世界といったところでしょうか、『Down by law』的なね。車で言うとトヨタ日産っていうよりスバル的なね。ロレックスのサブマリーナーっていうよりオメガのスピードマスター的な。