『木造』の人工衛星が宇宙へ!京都大学などのチームが世界初の挑戦 背景には“宇宙ゴミ”への懸念「今まで考えられなかった異常気象が起こる」
日本古来の技術「指物」が弱点を解決
突破口は、日本古来の技術にありました。滋賀県大津市の木工工房「黒田工房」。釘などを使わない「指物」とよばれる技術で家具などをつくっています。 (黒田工房 臼井浩明社長)「こういう凸凹があって。板を(穴にはめて)ぎゅっとずらして寄せる。組んでしまうと、座ってもびくともしない」
力のかかる方向などによって凹凸の形や組み方を変え、強度を保ちます。この技術を使うことで、温度変化の激しい宇宙環境でも耐えられるようになったのです。 (黒田工房 臼井浩明社長)「今まで全然結びつかなかった仕事が、こうやって機会をもらって。自分たちが思っている以上に可能性がある仕事なんだなと、再発見したのは間違いないと思います」
人工衛星に傷がつくと引っかかり…ケースから宇宙空間に出ない可能性も
5月下旬。研究室にやってきたのはJAXAの職員です。 (JAXA担当者)「じゃあ順番に見ていきますね。まずファスナーと衛星レール表面から」 開発の最終段階に入り、人工衛星が打ち上げの基準を満たしているかどうか検査が行われます。 (JAXA担当者)「ちょっとここが若干引っかかる。ちょっと白っぽくなっている。処置してもらった方がより安全かなと思います。触って引っ掛かりがあると気になったりするので、傷がつくと傷で引っかかっちゃって衛星が(宇宙空間に)出ないとかも、可能性としてないとは言えないので」 修正を重ね、今年6月にはJAXAの最終審査をクリア。打ち上げ地のアメリカに運ばれます。 (土井隆雄特定教授)「やっとここまで来て本当にうれしく思います。木造人工衛星は私たちが宇宙で木を使うことができることを証明しようと始めたわけですが、これが第一歩です。これからやっと宇宙での木の利用が始まると思っています」
木造人工衛星がついに宇宙へ!しかし…
11月5日、アメリカのケネディ宇宙センターから世界初の木造人工衛星を載せたロケットが打ち上げられました。打ち上げは無事に成功。しかし、本番はここからです。 12月9日、国際宇宙ステーションに届いた木造人工衛星が宇宙に放たれる日です。土井さんや学生ら関係者40人ほどが配信映像を見守ります。 そして、ついに宇宙空間に放出された「Ligno Sat」。ほかの2つの人工衛星と一緒にぐんぐん遠ざかります。 (土井隆雄特定教授)「(宇宙に)行きました、本当にうれしいです。うまく放出されないんじゃないか、どこかに引っかかるんじゃないかという思いが常にあったのでほっとしました」 今後3か月ほどの間、地球の軌道を回りながら、木の断熱性能やゆがみなどを計測しデータを地球に送ってくる予定です。 翌朝、人工衛星が日本の上空に差し掛かるタイミングで、信号の受信を試みます。ところが…