初の4強進出で”資金難”大津高サッカー部に2日間で寄付金1000万円集まる!「選手や指導者も身が引き締まる思い」と感謝
こうした状況を受けて保護者会が動いた。ジュニアサッカーの活動をサポートする株式会社グリーンカード(羽生博樹社長)の協力を得て、大津高校サッカー部の公式ホームページ上で「保護者会からのお願い」と賛助金の緊急募集実施が告知され、サッカー部の公式ツイッターでもつぶやかれた。ツイッターにはこう綴られていた。 「公立高校で精一杯頑張らせていただきますので、御支援のほどよろしくお願いします」 このツイートを昨シーズンのセ・リーグMVPで、熊本市出身の村上宗隆内野手(東京ヤクルト)がリツイート。村上は大津高校サッカー部のつぶやきを引用し、さらに「頑張ってください!!!」と言葉も添えて自らもツイートを投稿した。 大津高校サッカー部のつぶやきのリツイート数は3300件を超え、いいねの数も5000件に肉迫。大津の“SOS”はSNS空間を介して一気に拡散された。 OBのDF谷口彰悟とDF車屋紳太郎が所属する川崎フロンターレ、DF植田直通(ニーム・オリンピック)とFW豊川雄太(京都サンガ)がかつて所属した鹿島アントラーズなど、大津と結びつきの深いJクラブのサポーターや、公立校の挑戦を応援したいと望むサッカーファンなど、寄付に賛同する支援の輪は大きく広がっていった。 最終的に4日午後8時の寄付活動開始から48時間たたないうちに、補充予定額を上回る1000万円の寄付が集まるめどがついた。保護者会は6日いっぱいをもって募集を終了し、7日以降に届いた分は今後のサッカー部の施設拡充や遠征費用などにあてたいと使途を示した上で、坂田寛之会長名で感謝の言葉を綴っている。 「反響の大きさに私たち保護者会をはじめ、選手や指導者も身が引き締まる思いだと話しております。選手達も準決勝に向けての気合いはもとより万端ではありましたが、より一層皆様が応援して下さる思いを受け止め、顔つきも引き締まったように感じます」 寄付の際に記されたコメントは、すべて平岡総監督や山城朋大監督以下のスタッフに届けられた。坂田会長は「指導者・選手ともに一戦一戦を戦いきるつもりで最後の試合まで臨んでまいります」と、10日の決勝を見すえながらこうも綴っている。 「県立高校でも全国の頂点に挑戦することができる、地方の高校でも全国の皆さんの応援を受けることができる、という希望を全国のサッカー少年達に届けることができるよう、ひたすら一生懸命尽力いたします」 大津高校サッカー部は帝京高時代に選手権制覇を経験し、筑波大から熊本商業監督をへて1993年に赴任した、熊本県宇城市出身の平岡総監督の指導のもとで九州を代表する強豪校へ育て上げられた。輩出したJリーガーは50人を超え、そのなかには2006年のドイツワールドカップに臨んだGK土肥洋一、FW巻誠一郎も含まれる。
全国高校選手権で最高位だった1997年度、2001年度、2008年度のベスト8を超えたいま、“公立の雄”の窮地を救いたいと望んだ支援の輪の後押しを受けながら、全国の舞台における大津の最高位だった2014年のインターハイ準優勝をも超える戦いに挑む。 公立校の全国高校選手権制覇は、2011年度の市立船橋(千葉)が最後。決勝の舞台に立つのも同年度の市立船橋と四日市中央工(三重)が最後となっている。国立競技場で8日に対峙する関東一との準決勝から、歴史を変える挑戦が待っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)