音楽家・渋谷慶一郎と香水ブランド「ラニュイ パルファン」、アーティスト・和泉侃がつくる“音楽×香り”の一夜 ピアノソロコンサート「Living Room」が提示する可能性
今年6月に、アンドロイドとオーケストラ、仏教音楽・声明が交錯する前代未聞のオペラ作品「MIRROR」(初演:2022年・ドバイ)の凱旋公演を成功させた音楽家・渋谷慶一郎。そんな渋谷のピアノソロコンサートが12月19日に東京・紀尾井ホールで開催される。
「Keiichiro Shibuya Playing Piano-Living Room」と題された今回の公演は、"架空のリビングルーム”をテーマに、ステージには建築家・妹島和世がデザイン・制作してきた家具や、同氏が所有するルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe、以下、ミース)やル・コルビュジェ(Le Corbusier、以下、コルビジェ)の家具が配置された「リビングルーム」のような空間を再現。気鋭のバイオリニスト・石上真由子をゲストに迎え、渋谷の楽曲の他、エリック・サティ(Erik Satie)やアルヴォ・ペルト(Arvo Part)、高橋悠治らの楽曲を演奏する。
特筆すべきは、「香り」とのコラボレーション。会場は香水ブランド「ラニュイ パルファン(LA NUIT PARFUM)」とアーティスト・和泉侃(いずみ かん)が、渋谷のアルバム「for maria」を着想源として制作した香りで満たされることになる。この他に類を見ないコンサートは、いかにして実現に至ったのか。制作背景や狙い、その可能性について、渋谷と和泉、「ラニュイ パルファン」代表・海老原光宏の3人に話を聞いた。
「架空のリビングルーム」をコンセプトとした理由
――まず、渋谷さんが「架空のリビングルーム」というコンセプトのもとにピアノソロコンサートを開催しようと思った経緯についてお聞かせください。
渋谷慶一郎(以下、渋谷):6月に凱旋公演を行ったアンドロイド・オペラは、規模が大きく未来的で、観客に「手元から離れたものを見ている」ような感覚を与えるパフォーマンスでした。続けて12月にピアノソロコンサートを開催するにあたり、アンドロイド・オペラとは全く異なるものにしたいと考え構想を練っていた時に、「リビングルーム」というコンセプトが思い浮かびました。