音楽家・渋谷慶一郎と香水ブランド「ラニュイ パルファン」、アーティスト・和泉侃がつくる“音楽×香り”の一夜 ピアノソロコンサート「Living Room」が提示する可能性
――「リビングルーム」という言葉・イメージにはリファレンスがあるのでしょうか?
渋谷:「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」のコレクションの舞台裏に迫った写真集も出しているニック・ワプリントン(Nick Waplington)というフォトグラファーの写真集を集めていたことがありました。彼の一番有名な写真集のタイトルが、確か「リビングルーム」と近いニュアンスの言葉だったんです。
海老原光宏(以下、海老原):ニック・ワプリントンは、「Living Room」という写真集を出してますね。
渋谷:あ、完全に一緒でしたか。何かがおぼろげに分かっている時や、モチーフになりそうなイメージやキーワードが思い浮かんだりしている時は、オリジナルソースを遡らないようにしているんです。 今回の話でも、実際にニック・ワプリントンの写真集を見返してしまうと、アイデアがそのイメージに収斂し、独自の創作への発展が難しくなってしまうので。
話を戻すと、ニック・ワプリントンの「Living Room」という写真集のイメージが頭にありつつ、家具が配置されたどこか不気味なリビングルームをステージ上に再現し、そこで僕が演奏しているのを観客が見ているみたいなパフォーマンスが実現できたら、新しいコンサート体験を提示できるのでは、と考えました。
ステージ演出を具体化するにあたって妹島和世さんに相談し、その結果、妹島さんが制作されてきたインテリアと、所有するミースやコルビュジェらによるインテリアをミックスしてコンポジションすることになりました。
「ラニュイ パルファン」、和泉とのコラボレーションが生まれた経緯
――海老原さんとのご関係についても教えてください。
渋谷:海老原さんとやり取りをするようになったのは、3年ぐらい前。今回のピアノソロの会場でもある紀尾井ホールで開催された田中彩子さんのコンサートで、編集者の太田睦子さんに紹介してもらったんです。その時から「いつか一緒に何かできたらいいですね」って話はずっとしていて、今回ようやく実現することができました。