音楽家・渋谷慶一郎と香水ブランド「ラニュイ パルファン」、アーティスト・和泉侃がつくる“音楽×香り”の一夜 ピアノソロコンサート「Living Room」が提示する可能性
――海老原さんは渋谷さんのご活動をどのようにご覧になっていましたか?
海老原:今に続く間柄になったのは渋谷さんがお話しされていたタイミングなんですけど、実は、渋谷さんがボーカロイドオペラ「THE END」 をBunkamuraオーチャードホールで上演された2013年に、編集者として取材させてもらったことがありました。渋谷さんは東京藝術大学ご出身でオーセンティックな音楽の基盤を持ちながら、現代の新しい音楽を切り開くという稀有なご活動をされているので「ラニュイ パルファン」を立ち上げた頃から、機会があればご一緒したいと思っていました。
――そもそも「ラニュイ パルファン」はなぜクラシック音楽に根ざした香水をつくっているのでしょうか?
海老原:私はクラシック音楽が大好きで、趣味でピアノを弾きます。その趣味が高じて、コロナ禍に少し時間の余裕ができたタイミングで編集業の傍ら「ラニュイ パルファン」を立ち上げました。背景には「クラシック音楽があまり聴かれていないのはなぜか?」という問題意識があります。
クラシック音楽は決して難しいものではないにも関わらず、魅力が多くの人に伝わらないのは、クラシック音楽がライフスタイルと繋がっていないからだと考えたんです。よって、クラシック音楽を日常的に使うプロダクトに落とし込むことができれば、より多くの人にリーチできると思い、検討とリサーチを重ね、香水でクラシック音楽を表現するプロジェクトを始めることにしたんです。最初にリリースした香水はモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel)のピアノ曲をモチーフとした「夜のガスパール」。調香は今回のプロジェクトにも参加している(和泉)侃さんに担当してもらいました。
音楽から香りをつくり出すプロセス・方法論
――和泉さんは今回のプロジェクトで渋谷さんの楽曲「for maria」をモチーフとした香りを制作されたと伺っていますが、調香のプロセスについて教えていただけますか?