パリ五輪の当落線上にいる日本代表の渡邉飛勇、個人のエゴを排除して貫く姿勢「他の選手がより良いプレーをできるようにしたい」
「リバウンドとハッスル、自分の仕事ができてチームが勝つことがベストです」
バスケットボール男子日本代表は本日、韓国代表とパリ五輪前では国内最後の実戦を行う。現在、チームには16名が帯同しており、この試合が五輪代表の12名を決めるための最後のトライアウトとなる。 故障中の渡邊雄太が出場すると仮定した場合、八村塁、昨夏のワールドカップ2023でローテーション入りしていた面々を含めた9名はメンバー入りが確定している思われる。そして、残り3枠を争う、過酷なサバイバルレースの渦中にいる一人が渡邉飛勇だ。 207cmのサイズと恵まれた跳躍力を備える渡邉は、大学時代からリバウンド力とリムプロテクターとしての非凡な才能を評価され、日本代表に招集されてきた。東京五輪代表にも選出されたが、3試合でプレータイムは与えられなかった。そして、昨夏のワールドカップ2023でもメンバー入りを確実視されていたが、大会直前の練習試合で右腕を負傷し無念の離脱となった。 今回こそ主要国際大会で日の丸をつけてコートに立つことを目指す渡邉だが、現状は極めて微妙な状況と言えよう。現在のメンバー構成を見ると八村、ジョシュ・ホーキンソンが要となるインサイド陣の控えとして、3ポイントシュートを期待するオフェンス重視、リバウンドを主体としたディフェンス重視で、それぞれ1枠を入れると予想できる。そして、ディフェンス側の枠を争っているのが、渡邉と川真田紘也ではないだろうか。 5日の試合で渡邉は2つのオフェンスを含む4リバウンド、1ブロックと持ち味を発揮。また、川真田もリバウンドはなかったものの、スピンムーブから得点し、ハッスルプレーやコンタクトの強さを生かしたディフェンスでインパクトを与えた。 渡邉は五輪という大舞台のメンバーに選ばれるか、落選するかの瀬戸際際にいることに対し「(ストレスを)感じる部分はあります」と率直な気持ちを明かした。それでも、試合で目立つ活躍をしてアピールするという、個人のエゴを排除してプレーすることを心掛けている。そこにはワールドカップ直前の練習試合で故障してしまった、過去の苦い経験も影響している。そして、何よりも泥臭い仕事をする黒子に徹することが自分のやるべき事と考えているからだ。 「僕はこのチームで(NBA史上に残るリバウンダー)デニス・ロッドマンやジャック(クーリー、琉球ゴールデンキングス)になろうとしています。いや、ジャックは得点も取るから違うかな(笑)。他の選手がより良いプレーをできるようにしたい。僕たちには素晴らしい選手がたくさんいるので、僕はハッスラー(ハッスルでチームに貢献する人)になりたいです」 こうしたマインドセットで臨んでいる渡邉だからこそ、何よりも意識しているのは目の前の試合に勝つことだ。今日の韓国との強化試合2戦目に出場するかはまだ発表されていないが、「自分のことよりもまずは試合に勝ちたい。リバウンドとハッスル、自分の仕事ができてチームが勝つことがベストです」と締めくくった。 渡邉が自分の意識する仕事をしっかりと遂行できるのかを含め、本日の韓国戦は当落線上の選手たちによる最後のアピールに注目したい。
鈴木栄一