航空業界・農業にも参入!知られざる静岡の200年企業
陸海空を制す「静岡の巨人」~トップは変化を恐れない八代目
静岡・島田市。4月上旬、SLで有名な静岡の大井川鉄道で静岡県の名所を巡る日帰りツアーがあった。「桜のトンネル」では客が車窓からの花見に大興奮。昼食は「2023年温泉宿ホテル総選挙」ビュッフェ部門で1位となったホテルでいただく。そしてツアーの目玉は高度5000mで富士山の上空を何度も旋回するフライトだ(ツアー料金3万7700円/12歳以上)。 【動画】航空業界・農業にも参入!知られざる静岡の200年企業 このツアーを企画したのは「フジドリームエアラインズ(FDA)」。「FDA」は静岡を拠点にローカル路線に特化した航空会社で、鈴与の傘下にある。 鈴与の拠点があるのは静岡有数の港町・清水だ。地元で「知らない人はいない」と言う。鈴与は139の会社を抱える巨大グループで、その事業は物流から商社、食品や航空、建設と多岐にわたり、売り上げは4900億円にものぼる。
静岡市清水区の富士川滑空場。グライダーや軽飛行機など、航空スポーツの練習場になっていて、ライセンスを持たない人は遊覧飛行を楽しむこともできる。この場に参加していた最高齢の82歳の男性が、鈴与グループ代表・鈴木与平(82)だ。 清水港の上空を飛び、「ある意味では責任感も感じます。やっぱりこの港を支えていかなきゃいけませんから」と言う。 鈴与の始まりは江戸時代後期の1801年。「清水湊(みなと)」で荷主と船主をつなぐ廻船問屋として創業した。創業者は播磨屋与平で、与平の名は鈴与の当主に代々受け継がれている。現在の与平は八代目だ。もともとの名前は通弘だが、「許可いただいて改名している。だから登記上も今は鈴木与平が本名」と言う。
明治時代に入ると、鈴与は石炭の販売を始める。鉄道の開通にいち早く合わせたことで国内屈指の石炭商になった。昭和初期には、日本で人気のなかったビンチョウマグロを初めてツナ缶にして発売。世界恐慌にあえぐアメリカに輸出し、大ヒットとなった。さらにマグロから抽出した成分で魚由来のインスリンを開発。戦後になると、日本で初めてマヨネーズをチューブに入れて発売。食生活の洋風化を見越してのことだった。 時代に合わせて新たな商売をする。この「変化」こそが鈴与の本質だ。 「時代はどんどん変わっていくから、その変化に戸惑っていたらダメ。結果を見てみると、やはりそういう変化の時にうまく対応できてきた。だから生き残ってきたんだろうと思います」(鈴木)