航空業界・農業にも参入!知られざる静岡の200年企業
航空業界に新風~地方と地方を直接結ぶ
富士山静岡空港の開港に向けて2008年にスタートした「FDA」。航空会社の設立は、学生時代グライダー部に所属した鈴木の夢だった。 静岡・牧之原市にある「FDA」の訓練施設「フジトレーニングアカデミー」に、立ち上げ当時、周囲が反対する中で鈴木が導入した訓練用のフライトシミュレーターがある。操縦に合わせて機体の揺れや傾きも忠実に再現する。その価格は「FDA」で使う航空機1機分の約40億円だった。 新興の航空会社では、外部の施設にパイロットを派遣して訓練するのが一般的だが、鈴木は「実際の飛行機で実現できない空の状況を訓練する。エンジンが止まったり、霧の中に入ったり。だから安全のためには(フライトシミュレーターが)どうしても欠かせない」と言う。 自社でパイロットの育成ができることで、最近の深刻なパイロット不足にも対応できているという。 「静岡にシミュレーターがあるのは非常にありがたい」(FDAパイロット・石内隆史)
「地方と地方をつなぐ」をコンセプトに、羽田とではなく、地方空港同士を直接結ぶ路線を拡大している「FDA」。現在16空港・26路線を運航している。このコンセプトは、鈴木がこれからの地方の可能性を信じて打ち立てたものだ。 「大きな町を経由しないでも交流が進んでいくことは大事だと思うんです」(鈴木) 東京と名古屋に挟まれる静岡。「FDA」が飛ぶ前は、どこに行くにもいったん大都市に出るしかなかったが、空港近くの農家、「無農薬茶の杉本園」の杉本鋭悟さんは「空港ができて初めて九州に行きました。確実に行動範囲は広がりました。最近は福岡によく行きます。草刈りメーカーがカフェをやっていて、そこでうちのお茶を使ってもらっています」と言う。 「FDA」で地方同士が交流し、新たなビジネスを生み出していたのだ。 「飛行機でいろいろなところと交流して、自分たちの文化を作る。若い人たちにも誇りを持って文化を語れるような世界は、すごく大事だと思います」(鈴木)