北極は日本に意外と近くて、今アツい サイエンスアゴラ2024「今、なぜ北極!?~気候変動と私とのつながり~」
では、実際にどのように大気を観測するのか。CONTRAILの観測手法の一つである手動大気採取は、飛行機が離陸して水平飛行に入る頃、コックピットに搭乗した研究者が室内天井の空気吹出口から外気を取り込んで採取していく。着陸後はすぐに研究所に運び込み、分析するという。
長年の観測から明らかになっているのは、大気中のCO2が増えている主な原因が化石燃料の大量消費であることと、夏は植物の光合成が活発になりCO2が減少すること。北極のCO2の季節変化は、高緯度地域の陸上植物の影響で低緯度地域に比べて大きく、2カ月ほど早く低下すること。そして、メタン濃度は対流圏・成層圏ともに増え続けていること。
藤田さんによると「飛行機は空飛ぶ実験室で、研究者は地球のお医者さん」。これからも上空10キロメートルから診察を続け、地球の治療法を探っていく。
身近な北極が、地球のより良い未来を考えるきっかけになる
北極ブースを企画した国立極地研究所の毛利亮子さんの話では「北極は遠すぎるから身近には感じられない」と言う人が少なくないそうだ。ところが「日本から距離は、北極点もハワイもほぼ同じ」だという。そう聞くと、急に身近に感じられるのではないだろうか。
気候変動の観点からも日本と北極は無関係ではいられない。東京より北極に近い北海道に住む私にとってはなおさらだ。4つの研究が、日本と北極、人と地球のより良い未来を考えるきっかけになることを期待したい。 一條亜紀枝/サイエンスライター