「おじさんの詰め合わせ」自民党総裁選2024ポスターのイメージ戦略とは。ジェンダー表象研究者の小林美香さんに聞く
実際に「おじさん」ばかりだが…?
8月21日、自由民主党が9月12日~27日に実施する総裁選挙に向けて、歴代総裁が登場する総裁選挙のポスターとウェブ動画を公開した。同日にTBS系の報道番組「news23」で、タレントのトラウデン直美氏が「おじさんの詰め合わせって感じがする」とポスターの印象を述べたところ、ネットを中心に賛否両論が起きている。 ほかの写真はこちら 実際にポスターにいるのは「おじさん」や「おじいさん」と言っても良さそうな高齢男性ばかりだ。そして、そうした人々だけが自民党総裁を務めてきたことを端的に示すこのポスターは、日本の政治の男性中心主義とジェンダー不平等を反映している。タレントの「おじさんの詰め合わせ」発言を「男性差別」だと批判するなら、そもそも中高年男性だけが自民党の総裁や日本の首相という権力の座に就き続けてきた状況を下支えする、圧倒的な女性差別(加えてLGBTQをはじめとする様々なマイノリティへの差別)という構造をこそまず問いただすべきだろう。そもそも「おじさん」ばかりじゃなければ、このようなポスターも生まれないのだから。それとも、政治における構造的な不平等よりも、「詰め合わせ」という比喩のほうが批判すべき問題なのだろうか……? (歴代自民党総裁や首相に女性がいないことがジェンダー不平等の結果だとは思えない、またはたんなる適材適所の結果ではないかと感じる場合は、安藤優子『自民党の女性認識―「イエ中心主義」の政治指向』の一読をおすすめします) 自民党総裁に限らず、社会における公的な重要性を持つとされるポストは、いまだにほとんど「おじさん」に占められている。そしてこのポスターからは、そうした不平等への問題意識が感じられるどころか、むしろそんなおじさんだらけのマチズモ政治を「THE MATCH」という格闘技を思わせるコピーとともにポジティブに表現しているように感じた。現在の自民党が、このようなエンタメ感の強い表現でイメージを発信するのはなぜなのだろうか。