「誰でも起きうる子どもの車中置き去りに要注意」小児科医が発信する“熱中症事故防止策”とは #こどもをまもる
2023年4月から、幼稚園や保育園の園児送迎バスに安全装置を設置することが義務化された。園バスの車内に置き去りにされた園児が熱中症で死亡した事故を受け、政府が行った緊急対策だが、小児科医の坂本昌彦さんは「一般家庭でも十分起きうる事故で、園バスの安全装置の設置で安心してはいけない」と警鐘を鳴らす。子どもの熱中症は自家用車での発生が多く、特に「保護者の仕事環境が変わる4月、5月は注意が必要」と指摘する坂本さんに、子どもの熱中症の背景と事故防止策について聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「子どもは外気温の影響を受けやすい」大人の3~5倍のスピードで体温上昇して熱中症に
――これから夏に向けて気温がどんどん高くなります。暑さや紫外線は、子どもにとってどのような影響があるのでしょうか。 坂本昌彦: 子どもは体重あたりの体表面積が大きいので、外気温の影響を受けやすいです。寒い場所にいれば身体が冷えやすく、暑い場所にいれば体温は上がりやすい。そのため、熱中症と言えば高齢者への注意喚起がよくなされますが、子どもの熱中症リスクも高いことを知っていただきたいです。 熱中症は暑さだけでなく湿度も重要です。体にこもった熱は発汗などで蒸発するときに外に逃げていきますが、高温多湿の環境で、湿度が非常に高いと、汗が蒸発しにくくなるため体から熱が逃げにくくなるためです。そのため体温を下げにくくなり、熱中症のリスクが高いとされているのです[1]。したがって梅雨の合間の晴れの日や梅雨明け、気温30度以上の日は注意が必要です。特に、乳幼児は上手に汗をかくことができないうえ、暑いからといって、自分の判断で飲み物を準備して摂ることはできませんので、やはり保護者が注意する必要があります。 ――大人が子どもの熱中症に対して、チェックすべきポイントはありますか。 坂本昌彦: 子どもの熱中症に関しては、特に注意していただきたいポイントが二つあります。一つは、中高生が運動やクラブ活動の際に熱中症になるケースです。件数としてはこちらが多いです[2]。集団での活動中はついつい我慢しがちですが、運動の合間に適度な休憩を取らせ水分補給もするなど管理も重要です。また、日差しのない屋内でも、窓を閉め切った体育館などでは湿度も高くなりやすく熱中症リスクが高くなることも知っておくとよいでしょう。 もう一つは、乳幼児が車内で熱中症になるケースです。車内に閉じ込められて、エアコンが切れた状態では、想像以上に気温が急激に上昇します[3]。子どもは大人の3~5倍のスピードで体温が上がっていくとされているため注意が必要です。