「誰でも起きうる子どもの車中置き去りに要注意」小児科医が発信する“熱中症事故防止策”とは #こどもをまもる
海外では「赤ちゃん忘れ症候群」と言われる――誰にも起きうる“車への子どもの置き去り”
――バスや車に子どもが閉じ込められて熱中症になってしまう事故は、毎年少なくありません。 坂本昌彦: そうですね。昨年は園バスに園児が置き去りになり熱中症で亡くなった事故がニュースになりましたけど、こういった事故は幼稚園・保育園・こども園だけではありません。一般家庭でも、実は十分起こりうることです。 例えば、子どもを駐車場に止めた車の中に置き去りにして親がパチンコに行っていて、その結果子どもが熱中症で亡くなってしまったというニュースを聞いたことがあるかもしれません。「とんでもない親だ」という声があがって、そういった事件だけがクローズアップされがちですが、必ずしもそういう事件ばかりではありません。親がうっかり子どもを車に置き去りにしてしまい、熱中症になってしまうというケースも起きています。 過去には、子どもを保育園に送迎しているときに起こった事故がありました。父親が子どもを保育園に送る際、後部座席に乗せた子どもはぐっすり眠っていたため、運転している間にうっかり子どもを送迎していることを忘れてしまい、駐車場に車を置いてそのまま会社に出社。午後になって、園から連絡があったことで子どもを車に置いてきてしまったことに気づいたものの、もう手遅れだった。実はそういった事件は、日本だけではなく海外でも起きていて「赤ちゃん忘れ症候群」という名前もついているぐらいです。 そういうことがあると、「子どもへの愛情がないから、こういう事件が起きる。愛情がある親は、そんな事件を絶対に起こさない」という声がよくあがります。しかし、これは愛情がないから起こる、愛情があるから起こらないという話ではないのです。誰でも起きうることを知ってほしいです。 ――特にどういったときにこういった事故が発生しやすいのでしょうか。 坂本昌彦: 例えば、大きなストレスがかかっていたり、すごく忙しくて疲れていたりするときです。ストレスは人の作業記憶に影響を与えることが知られています[4]。例えば、考えごとをしながら活動していると、記憶がスポンと飛んでしまうことがありますよね。これは注意力散漫な人だけに起こる話ではありません。 特に、新年度が始まって間もない4月、5月は注意が必要です。育児休暇を終えて復職する人も多いと思いますが、仕事に復帰すれば、お父さんやお母さんは子育てと仕事に忙殺されてしまう。そのような中で子どもを車に乗せて、出社前、保育園へ送る。あるいは迎えに行った後、ついつい、子どもを車に乗せていることを忘れてしまう。子どもとしゃべっていれば大丈夫でしょうが、ぐっすり眠っていたら、疲れや考えごとからお子さんを乗せているという記憶が飛んでしまう可能性も否定できません。そういう「うっかり」をシステマチックに防ぐ方法を考えなくてはいけません。