「隠れ家レストラン」が求められる今(2)店側のメリット
隠れ家レストラン(隠れ家、または隠れ家風飲食店を総称して記載する)が人気になっている背景について、前回は客側の視点でメリットを書いたのだが、店側の視点でも考えてみたい。
堂々と客を選べる店
メリットは客を堂々とふるいにかけられることだ。 カスタマーハラスメントという言葉があるように、歓迎しにくい客も存在している時代である。商品を蹴とばす客、店中を走り回る子ども、取り換えたおむつを店に置いて帰る親など、明らかな迷惑行為をする客に店は閉口している。 加えて繁忙期にコーヒー1杯で居続ける客やドタキャンをする客など売上を下げる行為も少なくない。しかし、店が事前に客を選ぶことは難しいし、一定の客を拒絶すると非難を浴びる可能性もある。 そこで隠れ家レストランのように、ある程度の手順を踏んで自分の店を選んでくれる客だとか紹介制や会員制、少人数制にすることによって、トラブルも軽減されるだろう。ドタキャンする客も少ないと想像できる。結果として食品ロスの軽減や人件費の削減も見込まれる。
集客、PRをどうするか
店側も客を選びたい。堂々と客を選別することができる手段としての「隠れ家」 いっぽうデメリットとして基本的に隠れ家、または隠れ家風である限り広告やPRはしにくい。集客には口コミの活用や口コミを促進させる仕組み作りが求められるだろう。 直接口コミを促すには、新たな顧客を紹介すると割引になるなどのサービスを設けるのも1つの方法だ。またSNSを使った口コミも重要な集客ツールとなるが、「隠れ家」である以上は、情報が自然に拡散することを狙った仕組みづくりをする必要が出てくる。 写真を撮りたくなるメニューや内装、口コミするための覚えやすいメニュー名や店名なども求められる。しかしこれらはあくまでもネット上に公開を許可している店においてのことなので、ネットツールを求めない(拒否する)店もある。 「隠れ家」といってもその方向性によって、集客方法は変わる。顧客側も他人には教えたくないという心理が働くため、集客に苦戦する店も少なくない。また、隠れ家風として人気の店がメディアで取り上げられるようになって「隠れ家風」ではなくなり売上が落ちる場合もある。
集客と「隠れ家」としてのバランス
いずれの場合も店舗が安定して経営するためには、常連客やリピーターの獲得は必須だ。顧客が新規顧客を連れてくるのが理想だろう。客側も、店に対して愛着を持っている場合が多いので、店を応援したい気持ちもある。「紹介できる自分」に優越感を抱く客もいる。 店にとっても良質な顧客の紹介は安心だ。しかし「隠れ家」である以上、あまり能動的に紹介を促しても「隠れ家」の意義が希薄になってしまうので、隠れ家という“神秘的な”意義を保ちつつ広げるための心理バランスが大切になるだろう。 (食の総合コンサルタント 小倉朋子)
日本食糧新聞社