日銀の7月利上げはなくなった? 円安が一服、個人消費も停滞
7月末に開かれる日銀の金融政策決定会合において、追加利上げはなされるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストが最新情勢を踏まえて解説します。 【グラフ】日経平均が史上最高値更新 日本でも欧米並みの賃金インフレが起こる?
喫緊の課題ではなくなりつつある為替対策
筆者は、日銀が7月に利上げと長期国債の買い入れ減額を同時決定すると予想してきました。しかしながら、金融政策決定会合を約1週間後に控えた現時点において「日銀 利上げ決定へ」などという観測記事やリーク報道が何も出ていないことからすると、7月の利上げ確率は低いと判断せざるを得ません。植田総裁が就任して以降、政策修正がある際は事前にマスコミ各社から、「日銀関係者」から得たとする情報が盛り込まれた報道が多く出回る傾向にありました。 ブルームバーグが実施した調査(調査期間:17~22日)によれば48人の回答者のうち、7月の利上げを予想するのは29%、9月は27%、10月は35%、それ以降は8%でした。7月の予想は依然として「人気」ですが、市場金利が織り込む利上げ確率は30%程度と高くありません。日銀が意図的にショックを与えたいなら話は別ですが、丁寧な説明を心掛けたいとする植田総裁がそうした奇策を採用するとは考えにくいです。 日銀が7月の利上げを見送る背景としては、円安一服が大きいでしょう。米ドル/円(USD/JPY)は7月上旬に162円付近まで上昇した後、24日は155円台まで落ち着いており、為替対策は喫緊の課題ではなくなりつつあります。USD/JPYが160円を超えて円安が進行している状況において、日銀が利上げを見送り円安が加速する事態を招いてしまえば、政治的な圧力が高まり、かえって日銀の政策的自由度が低下してしまう恐れがありましたが、現在の為替水準ならば様子見を選択する余裕がありそうです。また、利上げと長期国債の買い入れ減額の同時決定をすることで生じる、(為替市場における)材料出尽くし感を回避できるという利点もあります。為替が円高方向に推移するとの市場参加者の期待をつなぎ止めたい日銀にとってみれば、利上げを先送りする方が得策かもしれません。