日銀の7月利上げはなくなった? 円安が一服、個人消費も停滞
夏場以降に個人消費はマイナス基調を脱する?
この7月に限らず、日銀が利上げに慎重になる理由としては、やはり個人消費の停滞が大きいです。GDP(国内総生産)ベースの個人消費が4四半期連続でマイナスとなり、負の需給ギャップ(需要不足)も残存する中、金融引き締めを講じ、賃金・物価に下押し圧力をかける意味は乏しいでしょう。米国のように、強すぎる個人消費がインフレ圧力の根底にある訳ではありません。 もっとも、名目賃金ははっきりと加速し、一般労働者(≒正社員)の所定内給与(≒基本給)は5月に前年比+2.7%を記録しています。パートを含んだ数値で見ても前年比+2.5%と、1990年代前半と同程度まで高まっています。物価上昇を加味した実質賃金がマイナスであることから、あたかも賃金が上がっていないような印象もありますが、現実の名目賃金は大幅に上昇しており、しかも向こう数カ月はさらなる加速が見込まれています。最新値の5月段階では、ベア等実施前の賃金が支払われている企業が相応に多いためです。また定額減税による実質可処分所得の追い風も踏まえれば、夏場に所得環境が改善する蓋然性は高いと言えます。 消費者心理の停滞は懸念材料ですが、これらを踏まえると個人消費はマイナス基調を脱すると期待されます。日銀は夏場の個人消費について支店長会議などを通じて定性的情報を収集するでしょう。前向きな情報が得られれば、9月の利上げが現実味を増します。
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