ニッポンの異国料理を訪ねて: ウイグルの味を世界へ。 さいたま市「シルクロード・ムラト」が伝える故郷の一皿
妻の言葉を引き取って、エリさんがこれからの人生を語る。 「ぼくの思いはただひとつ。とにかく家族をちゃんと食べさせたいということだけです。そのために、シルクロード・ムラトをしっかり守っていきたい。でも、子どもたちにこの店を継げとは言わないですよ。彼らには自分の好きな世界で、好きなように生きてほしいから。老後はどうするかって? 温泉にでもつかって、のんびり過ごそうかな。でもウイグルに帰ることもあるかもしれないなあ。人生、先のことは分からない。明日はどんな風が吹くか、それは誰にも分からないから」 すでに人生の半分を日本で暮らしたエリさん。異国で愛する家族を養っていくことに心血を注ぎながらも、言葉の端々から望郷の念があふれるのだった。
【Profile】
熊崎 敬 フリーライター。1971年1月生まれ、岐阜県出身。明治大学を卒業後、サッカー専門誌の編集者となり、2000年フリーランスに。サッカーを中心に、野球、ラグビー、麻雀、エスニック料理など幅広いジャンルの取材・執筆を行なう。『サッカーことばランド』(共著・ころから)ほか著書多数。