スポーツバイクの可能性を追求した、稀代のシングルスポーツ「SRX600」
ヤマハを代表するシングルバイクであるSR、その新世代を担うスポーツモデルとして登場したのがSRX600/400だ。結果としてSRの方が長寿モデルとなったが、その先進的なデザインや技術は今も多くのファンを惹きつけて離さない。 【画像】SRX600のディテールや関連モデルをギャラリーで見る(26枚) 文/Webikeプラス 後藤秀之、取材協力:バイク王つくば絶版車館
真のシングルスポーツバイクを目指したSRX
1978年に発売されたヤマハSRは、シングルロードスポーツモデルというジャンルを切り拓いた。このSRの原型と言われているのが「モト・ライダー」誌の企画を通して島英彦氏が製作した、XT500のエンジンを搭載したロードスポーツモデル「ロードボンバー」である。このロードボンバーは鈴鹿8時間耐久レースで8位に入賞するという快挙を達成し、シングルエンジンを搭載したスポーツモデルのポテンシャルを証明した。 SRは好調な販売を続けていたが、キャストホイール化が不評であったことなどを考えると、本来意図されたシングルロードスポーツというよりもベーシックなバイクとして購買層に受け入れられていたと考えられる。しかし、本来スポーツバイクを得意とするヤマハは、SRの次の一手としてよりスポーツ性を高めたモデルを企画した。 ヤマハの歴史にSRXの名前が登場したのは、1984年のSRX250である。同年代のSR400が搭載するSOHC2バルブ399ccエンジンは、最高出力27PS/7000rpm、最大トルク3kgm/6500rpmだった。それに対してSRX250にはDOHC4バルブ249ccエンジンは、最高出力32PS/10000rpm、最大トルク2.4kgm/8500rpmという高出力・高回転型のシングルエンジンを搭載していた。デザインも最新のヨーロピアンスタイルで、当時流行していた角形のヘッドライトを採用、翌1985年にはフレームマウントのカウルを装着したSRX250Fもラインナップに加わった。デザイン、性能共に優れたバイクであったSRX250は、当時巻き起こっていたバイクブームの中で、車体のコンパクトさや扱いやすさから多くの女性ライダーにも愛用された。 しかし、ヤマハのシングルロードスポーツ戦略はここで終わるわけではななく、1985年にSRの後継として開発されたSRX600/400が発売された。SRX600と400は車体のほとんどの部品を共用しており、見分けるポイントとしてはオイルクーラーが装着されているかやフロントのブレーキがダブルかシングルか、リアショックにリザーバータンクがあるか、そしてサイドカバーのデカールが「6」か「4」かなどであった。