時代を先取っていた大阪「ともに学び、ともに育つ」教育 文科省通知は「不当な差別」弁護士会が撤回勧告
問われているのは「差別を放置するか否か」
弁護士会の人権救済申し立て制度は、弁護士会の見解を述べて是正を求めることによって人権に対する意識を高めてもらおうという制度であり、その処置に強制力はない。 しかしながら今回の勧告書の内容は、日本のインクルーシブ教育を考えるうえで非常に重要な視点が盛り込まれている。中でも特筆すべきは、「入り込み支援」などの創意工夫によって障害のある子どもたちが通常の学級で学ぶことを実現してきた大阪独自の教育実践について、障害者権利条約が掲げるインクルーシブ教育の理念に沿うものであるとした点だ。 国連障害者権利委員会は、「4.27通知」撤回の要請とともに、日本に対して学びの場を分ける分離教育の廃止に向けた取り組みを進めるように勧告しているが、条約批准国としてこの勧告を尊重しようとした際に、大阪が長年かけて培ってきた教育実践は一つのベースモデルになりうる、ということを示したともいえる。 となると、あとは文科省がどのような対応をするか、である。 「障害者を分離する学校は、そのまま障害者を分離する社会につながる」 この日の記者会見に参加した大阪府豊中市の自立生活センター「CIL豊中」の上田哲郎さん(47)が、「4.27通知」の問題を訴えるためスイス・ジュネーブに行った際、国連障害者権利委員会の委員の一人から言われた言葉だという。 別機関からとはいえ、実質的に同じ内容の勧告が繰り返された以上、「4.27通知」の問題はもはや大阪府下の障害児教育だけにとどまらない。学校において障害者の分離を強化するような通知は、社会における障害者の分離の強化につながりうる。そうなれば、いまも根深い偏見や無理解のために差別を受け続けている障害者を取り巻く環境は、さらにひどくなることも考えられる。 「4.27通知」の撤回勧告を通じて、文科省が問われているのは「差別を生み出す構造をこのまま放置するか否か」ということにほかならない。