時代を先取っていた大阪「ともに学び、ともに育つ」教育 文科省通知は「不当な差別」弁護士会が撤回勧告
大阪独自の方法は「先進的な教育実践」
「障害がある子どもたちを『分離』あるいは『隔離』することは差別であり、人権侵害」であるとして、親子らが大阪弁護士会に人権救済の申し立てをしたのは2022年10月末だった。それからおよそ1年半後に出てきた文部科学大臣宛ての勧告書は、申し立ての内容をほぼ全面的に認めた内容となった。 大阪弁護士会は勧告書の中で、障害者権利条約が批准国に義務付けているインクルーシブ教育を受ける権利について、「障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と単に同じ場所で学べばよいというものではなく、必要な合理的配慮と個別支援が保障されなければならない」としたうえで、大阪独自の「入り込み支援」や「付き添い指導」を活用した方法について「同条約が求める合理的配慮と個別支援が保障されている」と指摘。さらに「2006年に国連で障害者権利条約が採択されるよりも前から、先進的な実践として大阪府教育委員会によっても推進され、長年にわたり現に行われてきたもの」などと述べ、「障害者権利条約が定めるインクルーシブ教育の理念に沿うもの」であるとの見解を示した。 その一方で、文科省の「4.27通知」については、「週の半分以上を、特別支援学級の教室において、障害のない児童生徒から分離された状態で過ごすようにすることを求めるものであり、その内容は、インクルーシブ教育の理念に反し、それに逆行するものと言わざるを得ない」「通知によって、現にこれまで受けてきたインクルーシブ教育を受けられなくなる児童生徒が生じるとすれば、それは、その児童生徒らのインクルーシブ教育を受ける権利を侵害し、不当な差別となるもの」と断じた。
「どちらか片方だけとか、決められるのはいや」
記者会見では、申し立て人の一人でもある山根沙弥佳さん(40)が、今回の勧告書を受けた保護者や子どもたちのコメントを代読した。 「分けて特別な支援を…となると、障害のある子どもたちとそうでない子どもたちの両方から、お互いを知る機会を奪ってしまうことになります。ともに過ごす経験は教科書では学べない大切なこと。ともに学び、ともに育つ。日本がそんな素敵な国になるための大きな一歩になると思います」(保護者) 「この通知では、支援級の子どもたちだけでなく、子どもたち全員が『人の多様性』に触れる機会を奪われます。支援級から離された普通学級で教育を受けた私は、分ける教育に多様な人との出会いを奪われた一人だと思っています。大人になっても障害者の方との関わり方に戸惑います。こんな大人をつくらないでほしいです」(保護者) 「すべての子どもの思いに寄り添える学校、日本の教育であってほしい。文部科学省の『4.27通知』が子供に寄り添えているか今一度考えてほしいと思います」(保護者) 「どちらか片方だけとか、少しの時間しかいられないとか、決められるのはいや。お友達と一緒がいい」(9歳) 「大人がいろいろ決めてしまうのが疑問です。子ども本人の意見をもっと聞いてほしい」(15歳)