すれ違う「80代の親」と「50代の子」お互いの言い分、いつの間にか形勢が逆転しているのは当たり前
■〈ながら〉介護のための10原則 私は〈ながら〉介護のための10原則という旗を掲げました。 ①人生は長い。他にいろんなことをしながら家族を看よう。 ②仕事を続ける。その覚悟をアピールする。 ③決して隠さない。 ④介護は情報戦と知る。 ⑤ひとりで抱え込まない。 ⑥事前準備を怠らない。 ⑦地域の人間関係を大切に。 ⑧「食べる」ための技術と手続きを手に入れる。 ⑨「ケアされ上手」も年甲斐のうち。 ⑩制度を上手に利用する。 介護離職を防ぐためだけでなく、すべての働きながら介護する人たちへの呼びかけです。
相談者さんは触れておられませんが、息子さんは独身者だろうと思っています。2020年の段階で、50代の男性の約3.5人に1人は独身です(国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集(2023)』)。独身率はどんどん上がっていますので、すでに3人に1人かもしれません。もう珍しいことではないのです。 ■10年、20年の介護でも生活が支えられることが大切 1人息子さんですから、ご両親に対する責任感も人一倍あるのでしょう。ただ、心配のあまり将来の生活設計にまで考えが及んでいないのかもしれません。ここは相談者さんのほうから、介護離職の問題を冷静に考えてもらうよう、情報を提供してあげてください。
最近はリモートワークといって、家にいながらパソコンを介して、仕事をするという会社とのつながり方も多くの会社が採用しています。これなら家にいられるので、ご両親の体調にも細やかな対応ができますし、会社の人ともつながっていられます。 50代の会社員なら、年収も夫婦の年金より高いでしょう。それを失うと生活は不安です。10年、20年の介護にも生活が支えられるよう、ぜひ会社に相談して、一番良い働き方を見つけてください。息子さんがキャリアを失わなければ生活の安定も図れます。
育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日から介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置が事業主の義務となります。 ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等、②①の申出先、③介護休業給付金に関すること、の情報を提供する義務です。
樋口 恵子 :東京家政大学名誉教授/NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」名誉理事長