すれ違う「80代の親」と「50代の子」お互いの言い分、いつの間にか形勢が逆転しているのは当たり前
とてもありがたいのですが、私たちもいずれはいなくなります。その後、息子がどうするかが心配でなりません。実際の問題として、息子の収入がなくなれば、生活は私たちの年金でやりくりするしかないですし……。 一昔前でしたら、「なんて親孝行な息子さんでしょう」といわれたのではないでしょうか。でも、介護のために仕事を辞めてはいけません。 介護離職はここ数年の大問題になっています。小池百合子東京都知事は「7つのゼロ」を公約に掲げ、「介護離職ゼロ」もその1つでしたが、達成されていないと話題になっています。
私は2017年に『その介護離職、おまちなさい』(潮出版社)という本を書き、警鐘を鳴らしました。この本では、〈トモニ介護〉〈ながら介護〉というテーマを挙げ、企業も社会も〈ともに〉介護を支え、介護する人は、働き〈ながら〉介護が十分に可能な社会を目指しましょう、という提案をしました。 実際に大手企業の中には、休職や介護休暇、時間短縮などのシステムを作り、介護に直面した社員が辞めずに済むように配慮しているところもあります。国も育児・介護休業法を定めるなど、介護離職ゼロを目指す政策を行っているのです。
50代といえば、会社では管理職世代です。若者を育て、ご自身も次のステージを目指して努力する世代です。そんなキャリアを大切にしてもらってください。 日本は、会社を辞めてからブランクがあると、なかなか同等のキャリアで他社に就職することが難しい社会です。息子さんは50代とのことですので、60代、70代で再就職といったことになるかもしれませんが、どんどん条件が悪くなります。 子育ては「子どもが小学校に上がったら」といったように、未来予測が立てやすいのですが、介護は「何年で終わる」か予想がつきません。
雇っている会社にとっては、働き盛りで有能な人材を失うことになり大きな痛手です。会社は人材を育てるために、研修やその会社に適した仕事の仕方ができるように、社内でトレーニングするといった教育費、研修費に大きな投資をしています。 ましてや人手不足の時代ですから、育てた人材を大切にする制度を設けているはずです。多くの場合、子育てと同じ部署が介護に関する相談に乗ってくれるはずです。何ができるか、まずは息子さんに言って調べてもらってください。