16歳のとき、長崎に投下された原爆で両親と3人の弟を失った、現在95歳の森田富美子さん。90歳のときに日常のことや政治的な思いをSNSで発信し始め、91歳で初めて原爆での体験について触れ、現在Xでは約8.5万人のフォロワーを持つ。写真/杉山和行

お風呂に入っていると、娘が大声で「速報が出た！日本被団協がノーベル平和賞受賞!!」と飛び込んで来た。涙が出るほど嬉しい。私が平和賞を貰ったような感動。 【画像】「わたくし95歳」の森田富美子さんが長崎原爆投下直後、彷徨った町の様子 ＃核兵器禁止条約 ＃核廃絶 ＃戦争反対 2024年10月11日「わたくし95歳」(@Iam90yearsold) 10月11日、X(旧Twitter)でこう歓喜をつぶやいたのは、現在95歳の森田富美子さんだ。 2024年12月10日には、ノーベル平和賞授賞式が開催される。受賞したのは日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)。広島・長崎に原子爆弾が投下されて79年、悲願というにはあまりに長い時間を要し、そして、核の脅威は今も続き、むしろ高まっている状況ともいえる。 森田富美子さんは長崎に生まれ、1945年8月9日、16歳のときに長崎に投下された原子爆弾によって、両親と3人の弟を失った。その出来事について長い間語らずに過ごしてきたが、富美子さんは2020年8月10日から、「91歳になるまで声をあげなかった自分が情けない」と自分の心だけにしまってきた長崎での出来事を「わたくし91歳」というアカウント名でTwitterにツイートするようになった。 それから4年、アカウント名は年齢を重ねるごとに変化し、今は「わたくし95歳」として毎日、自らの被爆体験や政治のこと、日々の出来事について楽しいことも、怒りも、ときに厳しく、でもユニークなマインドも忘れずに、富美子さん自身がアップしている。富美子さんのXには現在約8.5万人ものフォロワーがいる。 そんな富美子さんの生き様を綴った書籍『わたくし96歳「＃戦争反対」　75年以上封印していた「戦争」「原爆」を語り始めた理由』(森田富美子・森田京子 親子共著)が戦後80年となる2025年の6月4日に刊行されることが決定した。毎年誕生月の6月には「わたくし〇歳」を1つ更新して投稿している富美子さんが、96歳になる月だ。 今回は現在制作中の原稿から、富美子さん自身が体験した長崎・原子爆弾の記憶、「1945年8月9日ーわたくし16歳」から抜粋した前後編をお届けする。前編では、学徒動員で市内から少し離れた香焼島(こうやぎじま)の工場で11時2分に投下された原子爆弾の被害に遭った16歳の富美子さんが、焼け野原の中、家族を探すために防空壕に行く姿をお伝えした。後編では、見慣れた町が一変し、変わり果てた自宅と家族の姿にひとり向き合う富美子さんの姿を振り返る。