なぜ西武は「パ高セ低」の交流戦で阪神に負け越したのか?
同点、そして逆転へ向けて盛り上がった気運が、瞬く間にため息へと変わった。二塁へ戻ろうと頭から飛び込むも、アウトを宣告されたショックからか。うつ伏せになったまま起き上がれなかった山川穂高の姿が、あまりにも痛々しかった。 終盤に追い上げを見せるもあと一歩が届かず、8-9で敗れた30日の阪神との交流戦。本拠地メットライフドームでの3連戦を、1勝2敗の負け越しで終えたターニングポイントのひとつをあげれば、走塁ミスで起こった7回の併殺に行き着く。 阪神の5番手・岩貞祐太から呉念庭、コーリー・スパンジェンバーグがタイムリーを放ち、さらに続いた一死満塁のチャンス。2回の第1打席で一時は逆転となる5号3ランを放っていた8番・愛斗が、レフトへ高々と飛球を打ち上げた。 サンズが必死に返球するも、タッチアップから呉がホームを駆け抜けようとしていた直後だった。カットに入ったサードの大山悠輔は、同じくタッチアップから三塁をうかがおうと、大きく飛び出していた山川の動きを見逃さなかった。 「まあ、そうなるんですよ。足のないやつが一生懸命ひとつ先に行こうとするとね」 試合後の辻発彦監督は苦笑いしながら足のない、つまりは鈍足に分類される山川がチャンスを広げようと、積極的に三塁を狙った姿勢にやんわりと苦言を呈した。4点のビハインドを1点に縮めたものの、痛恨の併殺で自ら流れを断ち切ってしまった。 「大いに反省しないといけないところでしょう。ツーアウトになったけど、チャンスは続いているわけだからね。そこまで無理をするところではなかったんだけど」 新型コロナウイルス禍で昨シーズンは中止された交流戦。2カード目を終えてセ・リーグが17勝14敗3分けとリードしているものの、導入された2005シーズン以降の通算成績では、パ・リーグが1112勝983敗63分けで圧倒している。 交流戦でセ・リーグが勝ち越したのは2009シーズンの一度だけ。翌2010シーズンにはパ・リーグ勢が1位から6位までを占め、通算成績でも楽天を除く5球団が勝ち越している。 優勝回数もソフトバンクの8回を筆頭にロッテが2回、日本ハムとオリックスがそれぞれ1回で続く。セ・リーグ勢の優勝が巨人の2回、ヤクルトの1回だけという状況にいつしか「パ高セ低」なる造語が生まれ、いまやすっかり定着した。