なぜ西武は「パ高セ低」の交流戦で阪神に負け越したのか?
慌てて打球を追おうとした若林は、着地後に素早く身体を反転させた。その際にバランスを崩して、左ひざを捻ってしまったのか。倒れ込んだまま動けない若林のもとへ駆けつけた、小関竜也外野守備・走塁コーチがすぐに両手でバツを作った。 ドラフト4位ルーキー(駒沢大卒)ながらリーグトップの20盗塁をマークし、4月上旬からリードオフマンとして西武をけん引してきた若林は、担架でベンチ裏へ搬送されて川越誠司と交代した。けがの状態に関して「まだわからない」とした辻監督は、検査のために東京都内の病院へ向かっていると明かした上で、さらにこう続けている。 「やっぱり落ち着かないでしょう。選手がこれだけそろっていないんだから。またけが人も出ているし、本当に大変ですけど」 けが人で言えば開幕直後に離脱した山川と栗山巧こそ復帰したが、死球で左腓骨を骨折した外崎修汰は復帰のめどがまだ立っていない。さらに27日にはキャプテン、源田壮亮の新型コロナウイルス感染が判明し、木村文紀と先発ローテーションに復帰したばかりのザック・ニールが源田の濃厚接触者と判断されて戦列を離れた。 1-0で勝利した前夜には6回途中まで好投を続けていた右腕・今井達也が、痛烈な打球を左手首付近に受けて緊急降板。一夜明けて打撲と診断されて首脳陣も胸をなで下ろしたはずだが、今度は若林が負傷交代を余儀なくされた。 離脱者が後を絶たない状況で打線を支えてきた中村剛也も、外野フライでも同点となる8回一死一、三塁でショートフライに倒れた。阪神の6番手・岩崎優の失投、真ん中高めの143kmの直球を打ち損じた悔しさが、天井を見上げる表情に凝縮されていた。 「余分な点をあげすぎたのでね。(阪神の)後ろのピッチャーがいいので、そういう戦いになると苦しいと思っていたけど。本当に(打線は)よくつないで追い上げていったんだけどね。残念だけど選手には明日ゆっくり休んでもらって、来週はビジターなので、また頑張っていきたい」 辻監督は努めてファイティングポーズを取った。巨人(東京ドーム)、ヤクルト(神宮)と続くビジターの6連戦へ。パ・リーグの上位3強、ソフトバンク、楽天、ロッテに食い下がっていくためにも、借金が再び「2」となった西武は、これまで通り交流戦を「パ高セ低」としていかなければいけない。正念場が訪れようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)