10番&先発の座を失った男が矢板中央に勢いをもたらす出色の出来。155センチのFW堀内凰希が示した己の矜持【総体】
指揮官もパフォーマンスに賛辞
[インハイ2回戦]矢板中央 1-0 駒澤大高/7月28日/アロハフィールド 矢板中央のFW堀内凰希(3年)は昨年度から出場機会を掴み、昨冬の高校サッカー選手権でも攻撃の切り札としてピッチに立った。最上級生となった今季は2月の県新人戦で10番を託され、4月に開幕したU-18高円宮杯プリンスリーグ関東1部でもエースナンバーを背負った。 【画像】堀北・ガッキー・広瀬姉妹!初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで選手権「歴代応援マネージャー」を一挙公開! しかし思うようにプレーができず、気がつけば途中出場が増加。迎えた6月のインターハイ予選から背番号は昨年と同じ20に変わり、起用法も攻撃の流れを変える“ジョーカー”のまま。役割も立場も去年と同じ――。 「悔しかった。見返すしかない。気にしている場合じゃないし、結果を出せばまた戻れる」と期し、自らの力を信じて夏の大舞台で躍動した。 7月28日に行なわれた令和6年度全国高校総体(インターハイ)の男子サッカー競技・2回戦。シード校としてこの駒澤大高戦が初陣となった矢板中央は相手の堅守に苦しむなか、前半32分に切り札に声が掛かる。背番号20は勢いよくグラウンドに駆け出していくと、持ち前のハードワークで相手を混乱に陥れる。二度追い、三度追いは当たり前。外されても即座に体勢を立て直し、ボールを追い続けてチームに勢いをもたらす。 後半に入ると、その守備に加えて得意のドリブルでもチャンスを演出する。 「代わった直後は足もとでもらえるタイミングがなく、自分の強みである局面を打開する働きができなかった。でも、後半になってから何本か受けることができて、サイドから仕掛けられるシーンがあったので良かったです」 155センチのサイズを活かして相手の懐に入り込み、キレのある動きで停滞気味の前線を活性化させた。すると、後半14分にFW山下魁心(3年)が先制点をゲット。リードを奪っても堀内の運動量は落ちず、攻守で相手の脅威となって勝利に貢献した。 堀内は長野パルセイロU-15から矢板中央に進学。ハードワークとドリブル突破を活かせると感じ、全国大会常連の強豪校で技を磨くことを決めた。2年次から出番を得た一方で、好不調の波が激しく、なかなかプレーが安定しない。 今季は結果がついてこず、ベンチスタートが増えた。だが、そのなかで徐々にメンタル面が落ち着き、この駒澤大高戦では出色の出来を披露。髙橋健二監督も堀内のパフォーマンスに賛辞を送った。 「バタバタしていて、落ち着きがない。失点する前に自分たちに流れを持ってこようと思い、早いタイミングで堀内を投入した。かなり活性化されたと思う」 一度は築いてきた立場を失ったかもしれない。それでも岡崎慎司、前田大然に憧れる背番号20は自分の力を信じ、チームに欠かせない選手であることを証明した。苦しい時期を乗り越えた男の復活は、矢板中央にとって心強い。次なる相手は青森山田。常勝軍団を打ち破る切り札として、3回戦でも与えられた場所で戦う準備を進めていく。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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