ルイ・ヴィトンの時計、新作「エスカル」は美しいシンプル3針 匠の技で輝く
連載《ゼンマイ女子》Vol.21
パリ五輪の開会式で、改めてフランスを代表するメゾンのエレガンスと存在感を示した「ルイ・ヴィトン」。この大会のために特別に製作したメダル・トランクや、170年にわたり培ってきたサヴォアフェール、すなわち匠(たくみ)の技にスポットを当てた演出に大きな注目が集まりました。その一流の美学はウオッチメイキングにも息づき、華麗な進化を遂げ続けています。 【写真はこちら】あのトランクを思わせる…ウオッチケースの出来栄えは? 3タイプのエスカルも詳しく!
■「エスカル」コレクション誕生から10年 新作が登場
それを象徴するのが、誕生から10年目となる2024年にコレクション初の「3針時計」として発表された「エスカル」の新作です! 「3針時計」というのは、時針、分針、秒針という、時刻を表示するために必要な最小限の要素だけで作られたシンプルな時計のこと。ルイ・ヴィトンや時計が好きな女性なら、もしかしたら新作のエスカルを見て、その静謐(せいひつ)なたたずまいに驚かれたかもしれませんね。私自身、初めて手に取った時には非常に驚きました。と、同時に、ようやくまだ見ぬ憧れの人に巡り合えたようなときめきを覚えました。 「こういう時計を待っていたのよ!」 なぜなら、エスカルはこれまで、大胆な発想を超絶技巧によって実現した複雑機構搭載のコンプリケーションウオッチを展開してきたコレクションだったから。それらはルイ・ヴィトンの時計製造の技術力と豊かな創造性を雄弁に語る傑作でしたが、言い換えればもう「芸術品」の域。一般的な女性が着けるにはあまりにも非現実的でした。 それだけに今回のラグジュアリーでありながらも日常に寄り添うシンプルなエスカルの登場は、ルイ・ヴィトンの時計作りの歴史の中でもエポックメイキングな出来事になるに違いありません。
■ケース径は39mm 性別問わないサイズ感
これまでのルイ・ヴィトンのウオッチに対するイメージを、いい意味でエレガントに覆した新作のエスカル。そのベースは、トランク製造におけるメゾンの歴史と、そこに宿る比類なきサヴォアフェールです。 ケースとストラップをつなぐ「ラグ」という部分は、過去10年間に製作してきた作品のデザインを踏襲。ルイ・ヴィトンのトランクを補強する真ちゅう製のブラケットやコーナーの角張ったフォルム、リベット留めされたパーツが着想源です。 一方、時計の「顔」となるダイヤルは、今回完全にリデザインされました。 39mmというジェンダーニュートラルなサイズのケースの中で、個性とさりげない高級感を漂わせるダイヤルは、ルイ・ヴィトンのモノグラム・キャンバスの細かいグレイン(しぼ)のある表面を再現した新しいテクスチャー。 金属製のダイヤルの上でキャンバスのしなやかな質感を完璧に表現するために、型押しをするダイヤルスタンプはいくつかの素材で試作を重ねて開発したもので、その繊細な表情は手元に極上のエレガンスをもたらします。 そんなダイヤルの上で存在感を発揮するのは、やっぱりリベットのモチーフ! 15分ごとに配されているポリッシュゴールド製のインデックス(文字盤の目盛りや数字)は、そのアイコニックな形状によって小気味いいアクセントに。 また、外周の目盛り表示にあしらわれたゴールドのスタッズは、トランクの外側に沿って並ぶビスを想起させます。