5億円オーバーだったフェラーリ「512TR スパイダー」は、1年と経たずに9000万円も値下がり!? カタログモデルではないレアすぎる跳ね馬の正体とは?
500時間以上を費やし内外装をキレイにした
そしてこのときの競売では、もとより強気と目されていた210万ポンド~270万ポンド(邦貨換算約3億9270万円~5億490万円)というエスティメート(推定落札価格)をさらに上回る280万ポンド。当時の日本円換算では、5億1400万円で落札……! という局面に至るまでのストーリーは、2023年のAMWオークションレビュー「LONDON」オークション篇でもお話ししたとおりである。 今回は、その後日談について。ロンドンで落札されたシャシーナンバー97310は、そのままRMサザビーズの修復部門「RMオートレストレーションズ」に引き渡され、6万5000ドル以上を投じてコスメティック関係の手直しが施されることになる。 この作業後に提出された請求書は、もとより新車に近い状態にあった512TRスパイダーの内外装を完璧なコンディションへと戻すために、のべ500時間以上が費やされたことを示しており、オリジナルのブル・コバルトの全面的な再仕上げを行ったうえで、「ブル・スクーロ(濃紺)」の新品カーペットに張り替え。同じくブル・スクーロの電動ソフトトップも新調された。 いっぽう、走行距離についてはLONDONオークション時からほとんど自走の機会はなかったようで、今回の「Monterey」オークション公式カタログ作成時点でも、オドメーターが示しているのは依然として575km未満。つまり、LONDONオークションでの落札以来、まだ5km程度しか走行していないことになる。 事実上の新車状態となった、この超レアなフェラーリ512TRに対して、RMサザビーズ北米本社は270万ドル(邦貨換算約4億400万円)~350万ドル(邦貨換算約5億2300万円)というエスティメートを設定した。 ところが、ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、LONDONオークション出品時より明らかにビッド(入札)の伸びが鈍く、結局締め切りまでに出品者サイドが設定した「リザーヴ(最低落札価格)」には届かないまま、流札となってしまったのである。
武田公実