5億円オーバーだったフェラーリ「512TR スパイダー」は、1年と経たずに9000万円も値下がり!? カタログモデルではないレアすぎる跳ね馬の正体とは?
前回の落札から9カ月後、モントレーに現れた512TRスパイダー
あるオークションに出品・落札されたばかりのクルマが、時を置かずして別のオークションに出品されるというのは、古今東西を問わず国際クラシックカー/コレクターズカーのマーケットでは、ままあることのようです。北米カリフォルニア州でRMサザビーズ北米本社が2024年8月15日~17日に開いた世界最大規模のクラシックカーオークション「Monterey 2024」では、2023年11月に同じくRMサザビーズの欧州本社が開催した「LONDON」オークションにおいて落札されたフェラーリ「512TRスパイダー」が再び姿を現し、大きな話題を呼びました。今回はそのあらましと注目のオークション結果について、お伝えします。 【画像】内外装をやり直し新車コンディションに! フェラーリ「512TR スパイダー」を見る(全30枚)
テスタロッサのビッグマイチェン版をベースに特別制作されたスパイダー
1992年1月に日本を含む主要マーケット各国で同時発表されたフェラーリ「512TR」は、1980年代の傑作スーパースポーツ「テスタロッサ」を1990年代の最新テクノロジーでリファインし、ランボルギーニ「ディアブロ」など後発のライバルに負けない、スーパースポーツフロントランナーへと再起するために用意されたモデルである。 一見したところ、テスタロッサのボディ内外装にフェイスリフトを加え、パワーを上乗せしただけのマイナーチェンジ版にも映るが、じつはそのフレーム構造からしてドラスティックな変更を受けていた。 くわえて、ピニンファリーナが手がけたボディのスキンチェンジもかなり大規模なもので、前後のバンパーはより丸みを帯びた形状へと刷新。テスタロッサ時代には複数のパーツで組み立てられていたリアのエンジンフードも一体プレスとされたうえに、左右フィンがテールエンドまで伸びるスタイルとなった。 いっぽう、180度V型12気筒4カムシャフト4943ccのエンジンは、ムービングパーツの軽量化とともに、シリンダーとライナーもニカシルコーティングで最新化。さらに吸排気系に大規模なモディファイを受けることになった結果、パワーは428ps。当時5ps刻みでのパワー表示が慣例とされていた日本仕様では、中身は同じながら「425ps」へとアップを果たしていた。 512TRは、1992年から1994年の間に2261台が生産されたと伝えられるが、シリーズ生産モデルはベルリネッタのみで、オープンモデルの正式設定はなかった。 それでもこの種のスーパーカーには、今も昔も「例外」というものが存在するのが常。30年前の512TRでも、特別な顧客の求めに応じて、ピニンファリーナが自ら製作したスパイダーが数台のみ存在していたことについては、2023年11月の「LONDON」オークションのレビューでもお伝えしたとおりである。