時計の歴史に残した偉大な足跡 ハミルトンの「ベンチュラ」伝説を紐解く
「もともと彼はベンチュラの熱烈なファンで、普段から愛用していました。『ブルー・ハワイ』での着用シーンは、スクリーン全体にクローズアップされました」 陸軍の兵役時代も愛用しており、西ドイツで撮影された有名な写真にも、軍服姿の腕に「ベンチュラ」を着けている。また、自身が愛用するだけでなく、多くの友人たちにこの腕時計をプレゼントしたという。
「1965年のクリスマス・イブ、彼は閉店間際の宝石店で、家族や友人へのプレゼントを買い込みました。その際、彼は自身のためにもブラックダイヤルとホワイトゴールドケースのベンチュラを購入し、生涯にわたって愛用しました。
後の1999年、エルヴィス・プレスリー財団は、この腕時計を彼の邸宅であったテネシー州メンフィスのグレースランドで行われたオークションにかけ、話題を呼びました。この腕時計は現在、購入時に発行された宝石店の領収書とともに、ハミルトンのミュージアムに所蔵されています。これは彼が所有し、使用したことが立証されている唯一の「ベンチュラ」です。近年では世界各地で展示され、ファンに興奮と感動を与えています」
ちなみに、エルヴィス・プレスリーは、伸縮するステンレススティール製のフレックスベルトを着けて使っていたことでも知られている。 「じつはオリジナルのベンチュラはレザーベルトのみで、当時はフレックスベルトのモデルは存在しませんでした。おそらく彼自身が他社のフレックスベルトでカスタムして使っていたのだと思われます。現在はフレックスベルト仕様のモデルを展開しています」
発売後7年で製造中止、1980年代に復活を遂げる
発売から7年後の1964年、ビジネス上の事情から「ベンチュラ」の製造は中止される。だが、再販を望む声は大きく、コレクターたちの間で長らく人気を誇った。 その後、ハミルトンはこのモデルの価値を再認識し、1988年に、クオーツモデルとして30年ぶりの復活を遂げたのだ。
その後はクロノグラフや機械式ムーブメントを搭載したモデルなど派生機種が登場し、現在はハミルトンの看板コレクションのひとつとなった。 また、アメリカのスミソニアン博物館には、「ベンチュラ」のオリジナルモデルが所蔵されている。