なぜ森保JはW杯“前哨戦”を4試合も「強化につながりにくい」国内開催にするのか…背景に見える赤字補填
赤字決算に対しては、蓄積してきた特定預金を切り崩して対応している。特定預金そのものも十分な残高があり、財務基盤は揺るがないという。前出の須原専務理事も「短期的には何ら問題ない状況にある」と明言している。 ただ、JFAは「代表関連事業収益」を、普及および育成活動に回すモデルを確立させてきた。日本サッカー界の未来へ向けた先行投資となるだけに、A代表戦の国内開催を介して原資を得られる循環をできるだけ早く回復させたい。 加えて、2022年度予算は上半期に国内で開催されるA代表戦の観客数を収容人員の50%で算出していた。だからこそ、ベトナム戦に続いて6月の4連戦でも100%で開催できれば、その分だけ増収に転じて赤字額を圧縮できる。 特に国際親善試合の場合、チケット販売やスタジアム内外でのグッズ販売、テレビ放映権などの合計で1試合あたり5億円の売り上げがあるとされる。ヨーロッパ組のコンディション作りを含めて、4試合をすべて国内で開催するメリットがここにある。 強化試合を最大で6試合しか組めない状況は、カタール大会に臨む他国も変わらない。つまり対戦国次第ではベストの陣容で来日する。 反町技術委員長も「強い相手と、できればワールドカップ出場国と対戦したい」と6月シリーズへの青写真を描く。 理想のマッチメークを具現化させる上でも、カタールの首都ドーハで日本時間4月2日に行われる、ワールドカップ本大会の組み合わせ抽選会が重要になってくる。 本大会で同じグループになった国とは、事前にテストマッチは組めない。ゆえに組み合わせが決まった直後から組み合わせ抽選会の会場は6月および9月へ向けたマッチメーク交渉の場に変わる。代表メンバーを絞る上でも重要な時期となる9月シリーズへ、反町技術委員長は海外遠征を念頭に置きながらこんな青写真も明かしている。 「9月に関しては、そういう(海外遠征の)ところも視野に入れながらやっていく必要があると思う。ネーションズリーグなどでヨーロッパ勢と対戦するのはなかなか難しい状況にあるが、極力いいマッチメークをしていきたい」 6月と9月にUEFAネーションズリーグが、各国ともに6試合ずつ組まれているヨーロッパ勢とは物理的に対戦できない。必然的に南米勢、アフリカ勢、北中米カリブ海勢でカタール大会出場を決めた国が最初のターゲットになる。 30日には日本代表の森保一監督だけでなく、JFAの田嶋幸三会長、反町技術委員長、そして新設された会長補佐に就いた元日本代表DFの宮本恒靖理事が抽選会へ旅立った。真価を問われるマッチメークへ。ドーハの地で新たな戦いがまもなく始まる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)