なぜ森保JはW杯“前哨戦”を4試合も「強化につながりにくい」国内開催にするのか…背景に見える赤字補填
26日にオンライン形式で実施された「FIFAワールドカップカタール2022出場権獲得会見」で、次回の国際Aマッチデー期間における海外遠征の可能性を問われたJFA技術委員会の反町康治技術委員長は、これをやんわりと否定していた。 「海外組の選手たちがヨーロッパのシーズンを終えて帰国し、日本国内で調整する形が多くなっているので、それも視野に入れて考える、ということになる」 昨年のA代表の同じ時期を振り返れば、ワールドカップ・アジア2次予選と親善試合の計5試合をすべて国内で、5月28日から6月15日までの19日間で戦っている。 長丁場のシーズンを戦い終え、ヨーロッパから帰国してくる選手たちが蓄積された疲労を取り除きながら、なおかつ強化試合へ向けたトレーニングを積む。2つの作業を同時進行で進めていく上で、千葉県内に高円宮記念JFA夢フィールド、大阪府内には堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンターがある国内は理にかなっている。 さらにはJFAの財政事情も少なからず関係している。 JFAは27日の評議員会で2021年決算を承認・公表している。約179億7710万円の収入に対して支出は約197億2786万円で、約17億5000万円の赤字となった。 予算では約28億円の赤字を計上していた。しかし、新型コロナウイルスの影響で日本サッカー協会創立100周年記念事業の規模が大幅に縮小され、さらに普及および育成活動が中止もしくは延期された結果として、支出と赤字額が圧縮された。 JFAは2020年度にも約8億2000万円の赤字を計上している。この年はコロナ禍で国内においてワールドカップ予選を含めた日本代表戦が開催されず、収入で大きな柱を担ってきた「代表関連事業収益」で大幅な減収を余儀なくされた。 昨年は国内でワールドカップ予選や国際親善試合が行われたものの、無観客での開催や入場者数に上限が設けられたため、必然的に入場料収入が激減した。JFAは2022年度でもコロナ禍を前提に予算を編成し、約192億円の収入に対して支出は約238億円を計上。赤字額は過去最大の46億円に達すると見込んでいる。 もっとも、埼玉スタジアムにベトナム代表を迎えた29日のアジア最終予選最終節で、キャパシティーの100%を前提にチケット販売を実施。4万4600人を集客したように、サッカー界を取り巻いてきた状況は少しずつながら変わりつつある。 評議員会後にオンラインでメディアに対応したJFAの須原清貴専務理事は、今後の収支状況に対する見通しをこう語っていた。 「スタジアムの収容人数の上限がいまのところ緩和もしくは撤廃され、今後もこのトレンドが継続されていくことが前提条件になれば、JFAの収支状況もしっかりと元の状態に改善されていく。もちろん、本当にそのような形に戻っていくのか、そして戻った形が持続性のあるものなのかどうかを、リスク要素としてとらえなければいけない」