なぜ森保Jはグループ最下位のベトナムに勝てなかったのか…W杯“本番”に向けて浮き彫りになった課題と不安
カタールワールドカップ・アジア最終予選の最終節が29日に行われ、7大会連続7度目の本大会出場をすでに決めている日本代表が、グループBの最下位ベトナム代表とまさかのドロー。サウジアラビア代表に抜かれて2位で全日程を終えた。 敵地シドニーで劇的な勝利をあげ、カタール行きを決めた24日のオーストラリア代表戦の先発から9人を変更。埼玉スタジアムでの凱旋試合に臨んだ日本だったが、攻撃面で連携を欠くなかで前半20分にセットプレーから失点。後半9分にキャプテンのDF吉田麻也(33、サンプドリア)のゴールで追いつくのが精いっぱいだった。 日本がベトナムと引き分け以下に終わったのは、1961年のムルデカ大会で南ベトナムに2-3で敗れて以来、実に61年ぶり。前日会見で「消化試合にはしない」と公言していた森保一監督(53)だったが、ホームで喫した屈辱的なドローを介して、237日後の11月21日に開幕する本大会へ向けて課題と不安が浮き彫りになった。
吉田主将「物足りなさを感じた」
まるで敗者のように、吉田はセンターサークル内に座り込んでしまった。 約7ヵ月におよんだアジア最終予選の終わりを告げる、主審の笛が鳴り響いた直後の光景。ようやく立ち上がった後も両手を腰のあたりに当て、うなだれながら挨拶に向かった心境を「歯痒さが一番大きかった」と明かした吉田は、さらにこう続けた。 「物足りなかったのは間違いない。プレー内容的にもゲームの質的にも物足りなさを感じているし、何よりもここ数日間ずっと集客を煽り、プレーでお返しすると言っておきながら、せっかく来てもらったお客さんの前で結果を出せなかったので」 前半20分にセットプレーから先制を許し、アジア最終予選で6試合ぶりに失点した。後半9分に約2年半ぶりとなる自身のゴールで追いつくも、守備を固めたベトナムから最後まで勝ち越し点を奪えない。連勝も「6」で止まり、不完全燃焼の思いを募らせたまま、試合後のピッチで行われたワールドカップ出場権獲得セレモニーに臨んだ。 敵地シドニーで快勝し、グループBの2位以内を確定させた24日のオーストラリア戦から、森保監督は前日に明言していた通りに先発陣を大幅に入れ替えた。 続けて先発したのは吉田と、右サイドバックの山根視来(28、川崎フロンターレ)だけ。実に9人が入れ替わった陣容に吉田は一抹の不安を覚えていた。 「これだけメンバーが変わると、最初からパッと上手くいくことはないんですよね。ある程度のミスや連携不足は出るだろうと予測していたけど、それにしても前半はよくなかった。後半は僕たちがよくなったというよりは、相手が落ちてきたのが一番かなと」 チームマネジメントにおいて、森保監督が大きなミスを犯した。 オーストラリア戦で途中出場だった、あるいは出番が訪れなかった選手を先発させた采配は、本大会へ向けてチーム力を底上げしていく意味でもうなずける。しかし、中盤の顔ぶれを含めて、選手を一気に替えすぎた感は否めない。 ベトナム戦の先発メンバーで練習できたのは実質2日間だけ。シドニーでは仮想オーストラリアとして試合形式の練習相手を務めていたから、森保ジャパンの主戦システムになった4-3-3で連携・連動を図れた時間も必然的に限られてくる。 アピールしたいという思いは空回り気味になり、チームとして思うように連動できない焦燥感が選手個々のプレーに走らせる。強引に映るドリブルや精度を欠いたシュートとちぐはぐさが目立った前半の途中で、吉田はある行動を取っている。 アンカーの柴崎岳(29、レガネス)とインサイドハーフの原口元気(30、ウニオン・ベルリン)、代表デビュー戦だった旗手怜央(24、セルティック)の中盤に「なるべく前へ行ってほしい」と檄を飛ばした理由を、吉田はこう明かした。 「前半の途中で重心がグッと下がる時間帯があったので。メンバーが変わって探り探りだったなかで、チャレンジしたい、自分の持ち味を出したいと思うのと同時に、ミスをしたくないと思う心理もわからなくもなかったんですけど」