「夜行急行」が鉄道観光を復活させる? 「寝台2両+座席主体」という新提案、“夜行専用会社”があったら面白くないだろうか?
衰退の背景にあるもの
夜行列車は、かつて多くの人に利用されていた移動手段だ。寝台車を使った快適な移動や、昼間の時間を有効に使える利点があるものの、新幹線や高速バス、格安航空の普及でその存在感が薄れてきた。本連載「夜行列車現実論」では、感傷やノスタルジーを排して、経済的な合理性や社会的課題をもとに夜行列車の可能性を考える。収益性や効率化を復活のカギとして探り、未来のモビリティの選択肢として夜行列車がどう再び輝けるかを考えていく。 【画像】「すげぇぇぇぇ!」これが「サンライズの車内」です!画像を見る(計14枚) ※ ※ ※ 夜行列車は、夜間に運行される列車のことだ。長距離移動を目的とし、乗客は夜のうちに移動することで、昼間の時間を有効に使えるという利点がある。特に寝台車を備えている場合、長時間の移動中に寝ることができ、目的地に到着したときの疲れを軽減できる。 かつて多くの人々に利用される主要な移動手段だった。東京から東海道本線で西へ進む列車や、上野から東北本線、高崎線、常磐線を通る夜行列車が数多くあった。しかし、現在では新幹線が東京から各地へ延び、 ・高速夜行バス ・格安航空 の普及により、価格や速度の面で“中途半端な存在”となり、減便や廃止が進んでいる。 ブルートレイン用の専用客車をリニューアルした例として「サンライズ出雲」や「サンライズ瀬戸」があるが、寝台特急や急行列車は車両のリニューアルもされずに廃止された。JR各社は ・効率化 ・収益性 を重視し、夜行列車の運行を縮小せざるを得なくなった。 その一方で、インバウンド需要の増加や円安、新型コロナウイルスによる赤字解消を背景に、出張費用が急騰している。職場が支給する出張費用の規定額を超える分を自腹で負担しなければならないビジネスパーソンが増え、この問題は現在、社会的な課題となっている。 このような状況を踏まえると、夜行列車の復活を提案する声が出てきても不思議ではない。
コストと利便性の均衡
先日、筆者(北條慶太、交通経済ライター)は当媒体に「「寝台列車」本格復活のカギは出張? 「ホテル高騰時代」に光る新たな魅力、コスト削減と快適性で注目か」(2024年11月20日配信)という記事を執筆した。その記事の要点は次の通りだ。 ・現在、定期運行している寝台列車は「サンライズ出雲」と「サンライズ瀬戸」などがあり、4社による運行となっている。 ・かつてのブルートレインは長距離運行が多く、運行管理が難しいため、多くは廃止された。 ・出張規定では宿泊費支給方法が変更され、安価な宿泊を選んだ場合の不公平感が問題となっている。 ・新幹線の発展により宿泊の必要性が減少し、出張時間の短縮や観光・接待の回避が進んでいる。 ・企業側には宿泊費削減のメリットが、出張者側には移動中に睡眠をとれるというメリットがあり、夜行列車の復活に期待が集まっている。 ・夜行バスに比べて寝台列車は「横になれる」ため、ビジネスユースに適しており、需要が見込まれる。 ・寝台列車には運行管理やコスト面での課題があり、現状では運行しない方がよいという意見もある。 ・サンライズ列車の代替編成には高額なコストがかかり、価格を下げるのは難しいが、ビジネスユーザーにとっては多くのメリットがある。 ・寝台列車の復活は、長期的な鉄道維持と成長戦略の一環として重要な選択肢と位置づけるべきである。 この記事には約300件のコメントが寄せられ(11月25日朝時点)、そのなかで興味深い提案があった。それは、東京~盛岡、東京~新潟、東京~金沢、東京~大阪、大阪~新潟、大阪~出雲、大阪~松山、大阪~博多などの区間に、座席主体で寝台車を2両ほど組み込んだ、 「昔の夜行急行列車のような列車」 を運行すれば、安価でインバウンドにも利用されるのではないか――というものだった。また、 「JR夜行」 のような専用会社を作り、夜行列車の運行管理を専門に行ってはどうか――という提案もあった。 今回は、この提案が現実的かどうか、感情的な視点を排除し、経済的な合理性に基づいて考えてみたい。