名豊道路が全線開通したら、静岡県中部は「中京経済圏」に完全に組み込まれるのか? その影響を考える
中京経済圏が静岡を飲み込む未来
名豊道路の全線開通が注目されている。 名古屋市と豊橋市を結ぶ国道23号名豊道路の72.7kmの区間は、5つのバイパスで構成されており、そのうち蒲郡バイパスの豊川為当インターチェンジ(IC)~蒲郡IC間が新たに開通される。 【画像】「えぇぇぇ!?」 これが名豊道路の「ルート」です! 画像で見る(13枚) この道路は静岡県境で国道1号バイパスと接続され、名古屋市から浜松市までの約100kmの区間が 「信号のない無料道路」 として利用できるようになる。 名豊道路の開通は、浜松以東の地域にも影響を及ぼすと予想され、特に静岡市を中心とした静岡県中部が、中京経済圏に取り込まれる可能性がある。
静岡県の中の「異なる経済圏」
静岡市と浜松市は同じ静岡県内にありながら、文化や産業が全く異なる形で発展している。例えば、プロサッカーチームの応援でも、静岡市民は清水エスパルス、浜松市民はジュビロ磐田と分かれている。考え方や価値観も大きく違うといわれており、それを象徴するのが2024年5月に行われた静岡県知事選挙だ。 この選挙は、川勝平太前知事の辞職にともなうもので、元浜松市長の鈴木康友氏と静岡市出身で元静岡県副知事の大村慎一氏が事実上の一騎打ちを繰り広げた(立候補者は6人)。結果は鈴木氏の勝利だったが、静岡県中部と東部では大村氏の得票が上回るという地域差が見られた。この選挙結果を示す地図では、大村氏優勢の地域が赤、鈴木氏優勢の地域が青で塗られ、 「小さな米国大統領選挙みたいだ」 とSNSで話題になった。 こうした背景があるため、鈴木氏も大村氏も地域間の対立を煽るような発言には慎重だった。どちらも「オール静岡」を掲げ、県全体の調和を目指す姿勢を強調していた。これは、県民の間に 「中部は静岡経済圏、西部は中京経済圏」 という認識があり、対立が深まれば米国のような分断につながりかねないと考えたためだ。 また、両者の公約にも地域ごとの特徴が現れている。鈴木氏はスタートアップの育成を掲げ、一方で大村氏は防災対策の強化を主張していた。この違いに、静岡市と浜松市を中心とした地域間の発想の差が表れているといえるだろう。