坂本龍一にアーティストたちが捧げるトリビュート|青野尚子の今週末見るべきアート
音楽だけでなくさまざまなメディアを横断していた坂本龍一。惜しくも2023年に逝去した彼は、世代を超えたさまざまなアーティストたちとのコラボレーションにもつねに積極的でした。それを再構成した展示が東京で開かれています。坂本の多面性を改めて体験できる展覧会です。 【フォトギャラリーを見る】 ミュージシャンとして知られた坂本龍一はメディア・テクノロジーにも興味を持ち、現代美術やメディア・アートのジャンルでも多くの作品を制作してきた。『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』は坂本とカールステン・ニコライらアーティストとのコラボレーション作品を中心にした展覧会。坂本は、会場となる東京・初台の〈NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]〉と開館前の準備期間から関わりを持ち、開館10周年・20周年記念企画展にも参加してきた。共同キュレーターはライゾマティクスの真鍋大度。彼は2019年から坂本の演奏を特殊な撮影装置でアーカイブするプロジェクトを行ってきた。
展示作品の一つ、毛利悠子の《そよぎ またはエコー》は『札幌国際芸術祭2017』で発表した作品を再構成したもの。彼女が石狩川河口から遡上する旅で出会った「朽ちながらもいまだ生々しく存在するさまざまなモノたち」に触発されたインスタレーションだ。坂本は自動演奏ピアノで演奏されていた楽曲などを提供した。ICCでは『札幌国際芸術祭2017』で行われた坂本とカミーユ・ノーメントによるパフォーマンスを記録した映像も見ることができる(シアター上映プログラムは定員あり)。
高谷史郎の《Piano 20110311》は東日本大震災で被災したピアノをスキャンするように対象物を写し取る方法で撮影した写真作品だ。ICC開館20周年記念企画展『設置音楽2|IS YOUR TIME』で,インスタレーションの一部としてこのピアノが展示された際に高谷が撮影した。《IS YOUR TIME》は津波のため修復不可能となったピアノを、世界各地の地震データによって演奏するというものだった。ピアノを破壊した大地のエネルギーを、そのピアノによって鳴動させる。大地から取り出した素材で生まれたモノと、そのエネルギーとが交錯する。