坂本龍一にアーティストたちが捧げるトリビュート|青野尚子の今週末見るべきアート
Dumb Type + Ryuichi Sakamotoの《Playback 2022》は1989年に発表され、その後何度かリモデルなどを繰り返しながら国内外で展示されてきた作品だ。世界各地でフィールド・レコーディングされた音源が流れ、透明なディスクが並ぶ。会場にはフィールド・レコーディングを行った、坂本と交流のあったアーティストらからのメッセージも展示されている。
李禹煥の《遥かなるサウンド》は坂本の生前最後のオリジナル・アルバムとなった『12』のジャケットのために描きおろされたドローイングだ。《祈り》は坂本の1日も早い回復を願って李が贈ったもの。坂本は2022年に〈国立新美術館〉で開かれた李の個展会場に足を運ぶなど、互いにリスペクトする関係だった。
坂本龍一+真鍋大度の《センシング・ストリームズ2023―不可視、不可聴》は観客がコントローラーを操作することで、放送局や通信事業者に割り当てられた周波数帯を一種の生態系として捉えたものを可視化するという作品だ。ICCでは『札幌国際芸術祭2014』で発表されたものをアップデートした最新バージョンが展示されている。生前の坂本と真鍋はアップデートに関して多くのアイデアをシェアしていた。坂本が不在であっても、彼の作品はアップデート版となって生き続ける。
展示にはこのほかにストレンジループ・スタジオ、フォーオーフォー・ドットゼロらとのコラボレーションによる映像作品などが並ぶ。縦横無尽に展開される坂本とアーティストたちとのクリエイションが音楽の、そしてアートの新しい地平を見せてくれる。
『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』
〈NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]〉ギャラリーA 新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階。~2024年3月10日。11時~18時(入館は閉館の30分前まで)。一般 800円ほか。
text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano 撮影:冨田了平 写真提供:NTTインターコミュニケ...