アマゾンの「プライムデー」で高まる購買意欲、競合企業はどう対抗しているのか?【米国企業の場合】
EC業界で最大規模のセールイベントであるAmazonの「プライムデー」。2024年は7月16日と17日に実施されました。例年、Amazonのセール期間中に多くの小売企業が競合するようなキャンペーンを展開していましたが、2024年は「プライムデー」期間中や期間外に、自社独自のさまざまなプロモーションやキャンペーンを実施する企業が目に付きました。「プライムデー」だけでなく、祝日や記念日をフックに訴求する小売事業者も増えています。「プライムデー」に関連した米国小売事業者の動向をまとめます。
2024年の「プライムデー」、競合他社は“競わない”選択
2024年は、2023年に比べてAmazonの有料会員向けセール「プライムデー」に参加する小売事業者が増えました。その一方、参加しないEC事業者は「プライムデー」を意識したセール競争にはそれほど熱心でなかったようです。
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』発行のデータベース「全米EC事業 トップ1000社」にランクインしているオンライン小売事業者100社のうち、Amazonの「プライムデー」に対抗するためにECサイト全体でセールを実施した小売事業者よりも、6月上旬に「父の日」向けでキャンペーンを実施した小売事業者の方が上回りました。 Amazonは2015年、有料会員の「プライム会員」限定のセール「プライムデー」を開始。その後、多くの小売事業者が独自のセールを実施してこの時期のセール競争に参加してきました。2024年も多くの小売事業者が独自セールを展開しましたが、Amazonの2大競合先である米スーパーマーケットチェーンのWalmartとTargetのセールは控えめな規模となりました。 ■ WalmartとTargetのセール規模は控えめ WalmartとTargetは2023年、「プライムデー」の開催と同じ週に大規模なブランドセールを実施。会員向けにさまざまな商品の割引販売を展開しました。 2024年について、Walmartは6月中旬に会員向けキャンペーン「Walmart+Week」を、Targetは自社セール「Circle Week」を「プライムデー」の1週間前に実施。両社とも、「プライムデー」の初日である7月16日火曜日にもECサイトでセール情報を提供していません。 たとえば、Targetはシンプルな「2日間のお買い得品」のプロモーションを展開。Walmartは会員向けセールを推進していましたが、トップページの「お買い得品」は通常時とほとんど変わりませんでした。 どちらもAmazonとあからさまに競合するようなプロモーションを避けたように映ります。 ■ プロモーションに力を入れる企業も値引きは抑える傾向 『Digital Commerce 360』の調査に参加している小売事業者のうち77%が、「プライムデー」初日の火曜日にプロモーションを実施しました。これは6月上旬にプロモーションを実施した小売事業者の69%と、2023年の「プライムデー」初日(同じく火曜日)の75%を上回りました。 一方で、多くの小売事業者はECサイトでの割引率を前年よりも縮小しています。調査対象期間中の最低割引率が前年は10%であったのに対し、2024年の「プライムデー」期間は6%に減少しました。ECサイトの最小割引額の中央値も縮小。調査対象期間中、最小割引額の中央値は前年の25%から2024年は20%に下がっています。 プロモーションを実施している小売事業者のうち、2024年の「プライムデー」の初日に割引を実施した小売事業者の割合は85.5%で、調査対象期間中の72.7%を上回っています。